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【投資戦略ウィークリー 2019年9月30日号(2019年9月27日作成)】“夏から秋へ~10-12月に向けて日本株は?”

 

夏から秋へ~10-12月に向けて日本株は?

  •  9/24週の日本株相場は、9/26の9月配当権利付最終日に向けた買いが意識される中、9/25に日経平均株価で22,000円割れとなる局面では押し目買いが入る堅調な推移だった。ところが、権利落ち日9/27には配当落ち分を下回る21,700円台まで下落する展開となった。9/5以降に商いを伴って上昇を開始してから22,000円超えまで短期間で上昇したことから「健全な押し目」が待たれるタイミングでもあろう。権利取りに伴う買い需要の一服が予想されるが、再投資の買いやNISAの非課税枠年間120万円の消化などによる下支え効果も期待されよう。
  •  9/25には日米首脳会談が行われ日米貿易協定の最終合意が確認された。日本の輸出産業の屋台骨とも位置付けられる自動車産業にとっては、自動車追加関税が回避される見通しとなったことは朗報だろう。また、米国産牛肉・豚肉やワインなどの関税引下げは消費税増税に身構える日本の消費者への恩恵として日本経済の個人消費を下支えする効果もあろう。
  •  足元は好調な日本株相場だが、10-12月期に向けては以下のリスクが挙げられる。まず、2020米大統領選を1年後に控えて民主党の有力候補が絞られつつあり、特にウォーレン上院議員は反ウォール街の急先鋒として知られ米国株の代表銘柄「GAFA」に対しても分割を主張するなど、対トランプ大統領だけでなく株式市場にとっても強敵となり得る。また、米ウィーカンパニーのIPO延期に関連してソフトバンクグループ9984)のビジョンファンドに対する与信枠を縮小する動きが出始めており、IPOに対する市場の見方が厳しくなることと同時に、日経平均への寄与度が高い同社株価の動向も懸念される。その一方、日銀の追加金融緩和の動向次第では銀行預金への口座維持手数料の議論とともに減配リスクの小さい高配当利回り・低PBR株のバリュー株へのシフトが進展する可能性もあろう。
  •  最近の動きではゲーム関連が目立つ。「ドラゴンクエスト・ウォーク」がスマホの位置ゲームとして「ポケモンGO」以来のヒットになりつつあり、10/18発売予定のNintendo Switch「リングフィットアドベンチャー」は嘗てヒットしたWii-Fitを上回るか期待がかかる。また、暗号資産関連で「ブロックチェーンゲーム」の「アイテム資産」への関心が高まりつつある点も要注目だろう。(笹木)
  • 9/30号では、オイシックス・ラ・大地(3182)、富士フイルムホールディングス(4901)、日鉄物産(9810)、弁護士ドットコム(6027)、ギークス(7060)、ファンケル(4921)を取り上げた。

■主な企業決算の予定

  • 9月30日(月):アダストリア、パイプドHD、しまむら、宝印刷、ERIホールディングス、タキヒヨー、オークワ、象印マホービン、ストライク、ヤマシタヘルスケアホールディングス、大光
  • 10月1日(火):ダイセキ、ダイセキ環境ソリューション、日本フイルコン、キユーソー流通システム、キユーピー、マコーミック
  • 10月2日(水):タカキュー、ニトリホールディングス、TSIホールディングス、カネコ種苗、サムティ、ペイチェックス、レナー、ラム・ウェストン・ホールディングス
  • 10月3日(木):エスプール、マルカキカイ、ナガイレーベン、不二越、毎日コムネット、平和堂、クリーク・アンド・リバー社、北恵、ペプシココンステレーション・ブランスコストコホールセール
  • 10月4日(金):トーセ、パルコ、システムインテグレータ、ネクステージ、クラウディアホールディングス、壱番屋オンワードホールディングス、インテリックス、日本BS放送、サンエー、サーラコーポレーション、フェリシモ、三協立山、ベルク、サカタのタネ、わらべや日洋ホールディングス、大阪有機化学工業、キャリアリンク、ワキタ、日本BS放送、アルテック

主要イベントの予定

  • 9月30日(月)

日銀、金融政策決定会合における主な意見(91819日分)

小売売上高(8月)鉱工業生産(8月)、百貨店・スーパー売上高(8月)、自動車生産台数(7月)、住宅着工戸数(8月)、建設工事受注(8月)、

国連一般討論演説の最終日

・ユーロ圏失業率(8月)、独失業率(9月)、独CPI(9月)、英GDP(2Q)、中国製造業・非製造業・コンポジットPMI(9月)、中国財新製造業PMI(9月)

 

  • 10月1日(火)

消費税率を10%に引き上げ

・パワーソリューションズ、東証マザーズに新規上場

・有効求人倍率(8月)、失業率(8月)、日銀短観(3Q、じぶん銀行日本PMI製造業(9月)、自動車販売台数(9月)

・米シカゴ連銀総裁、米ボウマンFRB理事、講演

中国建国70周年。習近平国家主席が演説し、軍事パレードが行われる

・中国休場(国慶節、7日まで)、香港休場(国慶節)

ISM製造業景況指数(9月)、米建設支出(8月)、米自動車販売(9月)、ユーロ圏製造業PMI(9月)、ユーロ圏CPI(9月)

 

  • 10月2日(水)

・レオクラン、東証2部に新規上場

・貸出先別貸出金(8月)、マネタリーベース(9月)、消費者態度指数(9月)

・米リッチモンド連銀総裁、米フィラデルフィア連銀総裁、米ニューヨーク連銀総裁、講演

・英保守党大会(マンチェスター、最終日)

ADP雇用統計(9月)、ロシアGDP(2Q)

 

  • 10月3日(木)

・日銀の布野審議委員、金融経済懇談会であいさつ(島根県松江市)

・対外・対内証券投資(9月22-28日)、じぶん銀行日本PMIサービス業・コンポジット(9月)

・米シカゴ連銀総裁、講演

・米クリーブランド連銀総裁、パネル討論会に出席

・米新規失業保険申請件数(9月28日終了週)、米製造業受注(8月)ISM非製造業景況指数(9月)ユーロ圏総合・サービス業PMI9月)、ユーロ圏小売売上高(8月)、ユーロ圏PPI(8月)

 

  • 10月4日(金)

臨時国会を召集

・米ボストン連銀総裁、米アトランタ連銀総裁、講演

米パウエルFRB議長、金融政策再点検のためのイベントで開会演説

米雇用統計(9月)、米貿易収支(8月)

  • 10月6日(日)

・米カンザスシティー連銀総裁、講演

・ポルトガル総選挙

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

■消費増税を前に消費動向を確認

10/1より消費税の税率が8%から10%へ引き上げられる予定。消費の落ち込みなどが懸念される一方、政府がポイント還元など2.3兆円規模の対策を用意していることや軽減税率導入により、影響は限定的と見る向きもある。前提となる足元の消費動向を確認しよう。

消費マインドを示す消費者態度指数は、8月に37.1と2014/4以来の低水準を付け、11ヵ月連続で低下。貿易摩擦や消費増税への警戒感のほか、現金給与総額が前年比でマイナスに転じていることも背景にあろう。7月の現金給与総額は9/20に速報値の前年比0.3%減から同1.0%減に下方修正。一方、小売売上高では大幅な増加は確認できず、駆け込み需要は盛り上がっていないもよう。反動減は限定されそうだ。(増渕)

【増税前の消費動向~消費マインドは低調、駆け込み需要の反動は限定的か】

 

■日本株の需給動向が焦点

日本株の需給について、裁定買い残(「先物売り・現物買い」のポジションを組んだ裁定取引を解消していない現物買いの残高)および裁定売り残(「先物買い・現物売り」のポジションを組んだ裁定取引を解消していない現物売りの残高)の推移を見ると、2019年になって売り残が増加し、6月以降に売り残が買い残を超過して以降、過去に例がない水準での売り残超過となっている。今後この不均衡が解消されるかどうかが日経平均の動向と共に注目される。

また、投資主体別売買動向では海外投資家の大幅売越しが継続している。その一方、事業法人の大幅買越しが続いており、自社株買いの増加傾向から今後も日本株相場を下支えする買いの主体となることが期待されよう。(笹木)

【日本株の需給動向が焦点~裁定買い残・売り残、投資主体別売買動向】

 

欧州で大麻由来薬が承認取得

GWファーマシューティカルズ(GWPHの9/23発表によると、同社の「EPIDYOLEX」は難治性てんかんであるレノックス・ガストー症候群とドラベ症候群患者向けの処方薬として、欧州委員会から販売承認を取得した。同薬は大麻草の含有成分カンナビジオールを多く含む。欧州では英国など一部の国が医療用大麻合法化に動いており、欧州全域での投入に道を開くものとなろう。

マリファナ関連株は、2018/6のカナダでの嗜好用大麻合法化を受け一時ブームとなっていたが、直近では軟調に推移している。ただ、医療用・娯楽用を含め市場の拡大基調は続いており、7月にはラッパー・実業家のJay-Zが大麻販売会社Calivaと提携するなどの動きも出ている。反転の機会となるか。(増渕)

【欧州で医療大麻がてんかんの処方薬として承認~関連株も反転となるか】

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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