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【投資戦略ウィークリー 2019年9月24日号(2019年9月20日作成)】“ゼロとマイナスの狭間からバリュー株へ?”

 

■ゼロとマイナスの狭間からバリュー株へ?

  •  9/19の日銀決定会合を前にして三井住友信託銀行の橋本社長より、日銀が追加の金融緩和策として民間銀行からお金を預かる際に年1%の手数料を取る「マイナス金利」の深掘りに踏み切った場合、「口座維持手数料」の導入を検討する考えが明らかにされた。個人金融資産のうち現預金が半分以上を占める中、特に高齢者層の中には「減らないならゼロ金利でも構わない」という安定志向の価値観を持つ人も多いだろう。その中で「預金が減るなら話は別」という意識から現預金が他の資産にシフトする構造変化が起きる可能性も否定できない。
  •  9/17週の日本株相場は、9/14にサウジアラビアの主要石油施設がドローン攻撃を受けて世界的な原油供給に懸念が生じたことに対し、9月末までに元の生産能力を回復する見込みと伝えられたことから9/17に日経平均株価で22,000円を超えた後は底堅い動きとなった。米FOMCでは9/18に政策金利が25%引き下げられ、併せてFRBが超過準備金利を0.3%引き下げたことや資産の拡大を容認する姿勢を示したことが好感された。その一方、日銀政策決定会合では9/19に現行の金融緩和策維持が決められた。今後の円高リスクなどを踏まえて「追加緩和カード」を温存した格好だが、日銀の総資産は2019/7末で5.23兆ドルまで拡大しており、対GDPでは2割弱のFRB、約4割のECBに対して日銀はほぼ100%となっている。これ以上の総資産拡大が困難な立場にあるため、追加金融緩和に動きにくく、米欧が更なる金融緩和を進めた場合に急激な円高を招きやすい立場にあるという面があろう。
  •  このような背景において、安定した配当を毎年出し続け、株主優待など個人投資家を意識した会社の株価が「1株当り純資産(BPS)」を大幅に下回っているとすれば、現預金からの資金シフトの受け皿として機能するのではないだろうか。企業の予想利益は変動しやすいが、株主価値である純資産は赤字にならない限りは減ることはなく毎年増加していく性質のものである。その点では株価の割安感の安定性という観点では低PBRのバリュー株のほうが低PER銘柄よりは優れていると言えよう。ただし、固定資産が多い企業は減損リスクなどを織り込む場合もあり、低PBR銘柄についても注意は必要だろう。(笹木)
  • 9/24号では、クラレ(3405)、インフォコム(4348)、ストライク(6196)、フェローテックHD(6890)、日本証券金融(8511)、スクウェア・エニックスHD(9684)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 9月24日(火):あさひ、ピックルスコーポレーション、スギホールディングス、オートゾーン、カーマックス、ナイキ、シンタス
  • 9月25日(水):西松屋チェーン
  • 9月26日(木):クスリのアオキホールディングス、ヒマラヤ、ニイタカ、コナグラ・ブランズ、マイクロン・テクノロジー
  • 9月27日(金):ハニーズホールディングス、日本エンタープライズ、DCMホールディングス、スター・マイカ・ホールディングス、ジャステック、ケーヨー、ハイデイ日高、ミタチ産業、ハローズ

 

主要イベントの予定

  • 9月23日(月)

・じぶん銀行日本PMI 製造業・サービス業・コンポジット(9月、確報値)

米ニューヨーク連銀総裁、米セントルイス連銀総裁、講演

米韓首脳会談(ワシントン)

・国連気候行動サミット(ニューヨーク)

・英 週内の早い時期にも、ジョンソン首相の議会閉鎖は違法かどうか最高裁が判断

・ECB総裁、欧州議会で証言

華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟CFO、出廷

・ユーロ圏総合・製造業・サービス業PMI(9月)

 

  • 9月24日(火)

・Chatwork、マザーズに新規上場

・桜田・経済同友会代表幹事(SOMPOホールディングス社長)の会見(日本記者クラブ)

・黒田日銀総裁、大阪経済4団体共催懇談会であいさつ

景気動向指数(7月、速報値)

・国連総会一般討論演説(30日まで)

・米主要20都市住宅価格指数(7月)、米FHFA住宅価格指数(7月)、米消費者信頼感指数(9月)、独IFO企業景況感指数(9月)

 

  • 9月25日(水)

日銀金融政策決定会合議事要旨(729-30日分)

・日銀の政井審議員が金融経済懇談会であいさつ・記者会見(三重県津市)

・水素閣僚会議(都内)

・企業向けサービス価格指数(8月)、営業毎旬報告(9月20日現在)、スーパーマーケット売上高(8月)

国連総会の場で日米首脳会談と米側が公表

・米シカゴ連銀総裁、米ダラス連銀総裁、講演

・米新築住宅販売件数(8月)

 

  • 9月26日(木)

・日本取引所グループの清田CEO定例会見

・麻生財務相と黒田日銀総裁が全国証券大会であいさつ(都内)

・HPCシステムズ、マザーズに新規上場

・LNG産消会議(都内)

工作機械受注(8月、確報値)

・米ダラス連銀総裁、米セントルイス連銀総裁があいさつ

・米ミネアポリス連銀総裁、カーニー英中銀総裁、講演

ECB経済報告、ECB総裁講演(フランクフルト)

GDP46月、確定値)、米卸売在庫(8月)、米新規失業保険申請件数(9月21日終了週)、米中古住宅販売成約指数(8月)、ユーロ圏マネーサプライ(8月)

 

  • 9月27日(金)

・ジャパンディスプレイが臨時株主総会を開催

・東京CPI(9月)、対外・対内証券投資(9月15‐21日)

・米フィラデルフィア連銀総裁、講演

米個人所得(8月)米耐久財受注(8月)米個人支出(8月)米ミシガン大学消費者マインド指数(9月)、ユーロ圏景況感指数(9月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(9月)、中国工業利益(8月)

 

  • 9月29日(日)

・英保守党大会(マンチェスター、10月2日まで)

      (Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

9月のFOMCでは0.25ptの利下げ

FOMCは9/17-18の定例会合で、FF金利誘導目標を0.25pt引き下げ1.75-2.00%とした。利下げはこれで2会合連続。声明文では、家計支出は力強く伸びたものの設備投資および輸出は弱まっており、インフレ圧力も抑制されていると指摘。投票権を持つボードメンバー10名のうち、パウエル議長・ウィリアムズ副議長を含む7名が賛成票を投じた。

パウエル議長は、景気拡大の維持には「穏やかな」政策変更で十分との認識を示した。ドットチャートによると、年内の金利据え置きがFOMCのコンセンサス。ただ、会合参加者17人の意見は割れており、7人が年内1回の追加利下げを見込むが、5人は据え置き、5人は1回の利上げを予想。政策判断の分断が今後の火種となる可能性も。(増渕)

9月のFOMCでは2会合連続で利下げを決定~先行きの見方には分断も】

 

■中東情勢悪化で原油が乱高下

サウジアラビアの国営サウジアラムコの石油施設が9/14、ドローンの攻撃を受け570万バレル/日の生産が停止。これを受け、9/16の原油相場は急反発。WTI原油先物は前営業日比14.7%高の62.90ドル/バレルとなり、5/21以来の高値を付けた。一方、サウジのアブドルアジズ・エネルギー相が9月末に1,100万バレル/日の生産能力を回復すると述べたことで、9/17は反落。WTI原油は同5.7%安の59.34ドル/バレルとなった。

トランプ大統領が9/15に戦略石油備蓄の放出を許可したこともあり、原油相場も一服となろう。ただ、イエメンの武装組織フーシ派は今後もサウジの石油施設を標的にすると表明。OPECプラスは全加盟国に減産を行うよう求めており、原油相場は底堅く推移しそう。(増渕)

サウジ石油施設への攻撃で原油急騰~供給不安は後退で大幅反落だが

 

米国S&P500構成企業の利益予想

米国株は、9/19現在ダウ工業株30種平均(NYダウ)で27,094ドルと7/16に付けた過去最高値27,398ドルに接近している。ファクトセットが公表している米国S&P500構成企業の利益予想によれば2019年2Q(4-6月)の予想利益が6月末時点で前年同期比▲2.7%に対し、8月末時点の実績値は同▲0.4%と市場予想を上回ったことが米国株の上昇に貢献した面が大きいと考えられる。

2019年3Q(7-9月)の予想利益については、6月末時点で同▲0.7%に対して9/13時点では同▲3.7%と見通しが悪化している。9/3発表のISM製造業景況指数(8月)が50を下回るなど製造業の景況感が悪化する中、足元で堅調な小売・消費・住宅関連でどこまで巻き返せるかに注目が集まろう。(笹木)

【米国S&P500構成企業の利益予想2Qは市場予想を上回ったが3Qは?

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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