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【投資戦略ウィークリー 2019年8月26日号(2019年8月23日作成)】“リアルとネットの融合が業績を左右する時代”

 

■リアルとネットの融合が業績を左右する時代

  •  8/19週の日本株は、不安定な海外情勢への懸念が残る中で低調な商いが続いたが、国内情勢の中にはポジティブなものも見られた。海外では、ドイツの追加財政支出や中国の融資金利改革といった景気刺激策への期待により、米国10年債利回りが2年債利回りを下回る「逆イールド」懸念から落ち着きを取り戻したものの、8/23の米FRBパウエル議長講演待ちの心理から積極的な売買は手控えられた。その一方、8/21発表の7月訪日外国人客数(推計値)が前年同月比6%増となり、特に中国訪日客が初めて月間100万人超えとなるなど韓国からの訪日客数減を吹き飛ばす好調さを示した。更に、統合リゾート(IR)についても、既に名乗りを挙げている大阪府・市に続き、横浜市が山下ふ頭を候補地として誘致すると8/22に発表。これらの好材料に反応する関連銘柄も見られた。
  •  IRについては、シンガポールのリゾート・ワールド・セントーサ(RWS)の状況を見ると、成功の鍵は必ずしもVIP客向けのカジノではなく、実はテーマパークが握っていることが分かる。RWSでは「ユニバーサルスタジオ」の新アトラクションとして「ミニオン・パーク」や任天堂(7974の「スーパーマリオ・ワールド」の投入が計画されている。特に「ポケモンGO」以降は拡張現実(AR)を取り入れたエンターテイメントが世界的に普及しており、スマホや携帯機を使ってテーマパークで遊ぶスタイルが注目される。テーマパークに連動して共通の世界観やキャラクターで映画やゲームを展開するなど、エンターテイメント関連ビジネスの射程は今後一層拡がりを見せるものと期待される。
  •  エンターテイメントの世界だけでなく、小売業や製造業においてもリアル(物理空間)とネット(仮想空間)の融合・シナジーが重要となっている。直近に5-7月期決算を発表したウォルマート(WMTターゲット(TGTはネット通販を通じて業績を伸ばしている。また、製造業では設備や機械など物理空間にある「モノ」の自動化と同時に、大量かつ多様な「モノ」のデータを「産業IoTプラットフォーム」に収集して仮想空間にデジタル情報として表示し、一元的に管理することで製造業のマネジメントを劇的に効率化する動きも出始めている。リアルとネットの融合・シナジーが企業業績を左右する時代と言えよう。(笹木)
  • 8/26号では、横浜冷凍(2874)、マツモトキヨシホールディングス(3088)、JSR(4185)、中外製薬(4519)、住友重機械工業(6302)、菱洋エレクトロ(8068)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 8月27日(火):ダイドーグループホールディングス、タカショー、JMスマッカー、ヒューレット・パッカード・エンタープライズオートデスク
  • 8月28日(水):エイチ・アイ・エス、コティ、ティファニー、ブラウン・フォーマン、H&Rブロック、PVH
  • 8月29日(木):菱洋エレクトロパーク24、ダラー・ゼネラル、ダラー・ツリー、ベストバイ、アルタ・ビューティ
  • 8月30日(金):アイ・ケイ・ケイ、アインホールディングス、トリケミカル研究所、キャンベルスープ

 

主要イベントの予定

  • 8月26日(月)

景気先行CI指数(6月、確報)景気一致CI指数(6月、確報)

G7首脳会議(仏ビアリッツ、最終日)

・英中銀総裁講演(フランクフルト)、独Ifo企業景況感指数(8月)

米耐久財受注 7月)

 

  • 8月27日(火)

・企業向けサービス価格指数(7月)

・米FHFA住宅価格指数(6月)、米主要20都市住宅価格指数(6月)、米消費者信頼感指数(8月)

GDP2Q

・中国工業利益(7月)

 

  • 8月28日(水)

・韓国を「ホワイト国」(グループA)から除外する政令が施行

日本政府が国連・世銀などと第7回アフリカ開発会議を開催(30日まで、横浜)

・ザリフ・イラン外相が日本記者クラブで会見

・米リッチモンド連銀総裁、講演

・ユーロ圏マネーサプライ (7月)

 

  • 8月29日(木)

・日銀の鈴木審議委員が講演・記者会見(熊本市)

・米サンフランシスコ連銀総裁、講演(ニュージーランド)

・世界人工知能大会(上海、31日まで)、テスラCEOイーロン・マスク氏が出席予定

・米GDP2Q、改定値)、米卸売在庫(7月)、米新規失業保険申請件数(8月24日終了週)、米中古住宅販売成約指数(7 月)

・ユーロ圏景況感指数(8月)、独失業率(8月)、独CPI(8月)

・ブラジルGDP(2Q)

 

  • 8月30日(金)

完全失業率(7月)有効求人倍率(7月)消費者物価指数(東京都区部、8月)鉱工業生産指数(7月)小売売上高(7月)、百貨店・スーパー売上高(7月)、自動車生産台数(7月)、住宅着工統計(7月)、建設工事受注(7月)

米個人所得(7月)米個人支出(7月)米ミシガン大学消費者マインド指数(8月)

・ユーロ圏失業率(7月)、ユーロ圏CPI(8月)

・印GDP (2Q)、韓国中銀政策金利発表

 

  • 8月31日(土)

中国製造業PMI8月)、中国非製造業PMI8月)

 

  • 9月1日(日)

米、中国 からの輸入品に10%追加関税を一部品目対象に発動

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

7月のFOMCの議事要旨

FRBが8/21公表したFOMC議事要旨(7/30-31開催分)では、0.25bp利下げの理由として、企業投資のさらなる鈍化への保険、経済下振れに対するリスク管理、インフレ目標への回帰の3つを列挙。米経済は今のところ良好だとしつつ、見通しへのリスクを浮き彫りにした。

市場は次回9/17-18のFOMCでの50bp利下げを98.5%の確率で織り込む。8/14には米10年債利回りが米2年債利回りを下回る「逆イールド」も発生。利下げ観測を強めている。ただ、7月の小売売上高は4ヵ月ぶりの高い伸びとなり、ニューヨーク、フィラデルフィア両地区連銀の8月の製造業景況指数は市場予想を上回るなど、貿易戦争激化を前に米経済は持ち堪えている。今の利下げ期待はやや過剰だろう。(増渕)

FOMC7月利下げの根拠を公表~市場は次回50bp利下げを織り込む】

 

■日米の賃金上昇率と物価上昇率

日米の賃金上昇率と物価上昇率の推移を見ると、米国では平均時給伸び率が2018/8以降は前年同月比3%以上の高水準を続けている一方、コアCPI上昇率が同2.2%以下と伸び悩んでいる。両者の差は2018/7迄よりも拡大し、可処分所得の上昇が米国の堅調な個人消費を支えているものと考えられる。

これに対し、日本では有効求人倍率が2019/1-6まで1.61-1.63倍という高水準だったものの現金給与総額伸び率が2019/1-5まで前年同期比マイナス、かつコアCPI上昇率を下回るなど米国とは対照的である。春闘ベアが想定以上に下振れしたことやパートタイム労働者の労働時間短縮などが要因として考えられるが、2019/10からの消費税増税の悪影響が懸念される。(笹木)

【日米の賃金上昇率と物価上昇率~底堅い米国の消費、日本との違い】

 

■米国小売企業の5-7月期決算

米国の小売企業の5-7月期は明暗が分かれる展開となった。ディスカウントチェーンのターゲット(TGTは既存店売上高が前年同期比3.4%増と好調に推移。通期ガイダンスの上方修正も好感され、株価は一時19%高と急伸。ウォルマート(WMTも国内既存店売上高が同2.8%増、国内eコマース売上高が同37%増と良好だった。一方、メーシーズ(Mなど百貨店は顧客が慎重姿勢を強めたことで売上を落とした。

8/15発表の小売売上高は前月比0.7%増と4ヵ月ぶりの大幅な伸びとなり、市場予想も上回った。オンラインショッピングを含む無店舗小売が同2.8%増と牽引した。旺盛な消費需要を取り込む上で、eコマース対応が肝となろう。銘柄選定の際には注目したい。(増渕)

【好調な米国のディスカウントチェーン~eコマースへの対応で明暗分かれる

 

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アナリストのご紹介 フィリップ証券リサーチ部

笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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