【米国ウィークリー 2021年1月26日号(2021年1月25日作成)】“サプライチェーン変革が示唆する有望投資先は?”

 

”サプライチェーン変革が示唆する有望投資先は?

  •  IHSマークイットが22日に発表した1月の米製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が1と、新規受注の堅調な伸びを受けて前月の57.1から上昇。2007年5月以来の高水準となるなど米国製造業の好調さが示された。ただ、コロナ禍のパンデミックに伴うサプライチェーンの制約により材料・産出物価格が上昇しており、近い将来のインフレ高進が示唆された。期待インフレ率を表す10年物インフレ指数連動債(TIPS)の利回りも22日に一時2.182%まで上昇しており、サプライチェーン制約が企業経営における重大な関心事になりつつある。
  •  サプライチェーンの見直しとしては危機発生に対応し、柔軟な調達先の変更や特定国への集中を見直し分散化を進めることが挙げられるが、実際に調達先を柔軟に変更・分散することは難問である。この経営上の課題に対し、地理的制約に縛られることなくローカルで設計・試作・製造できる「ニューノーマル」の有力な選択肢とされるのが「3Dプリンティング」である。現在、多くの企業が中国をはじめとした海外に工場を置いて製品を安価に生産する「オフショア生産」を行うなか、3Dプリンティングの活用は、離れた工場から製品を輸送するコストと時間を省き、かつ、複数のパーツから構成される部品も1回のプリントで作製することで部品の組み立て工程が不要となるなど、企業のデジタル変革(DX)の目指す先の一つの到達点と位置付けられるべきものかも知れない。
  •  現に、テスラTSLAのCEOであるイーロン・マスクが設立したスペースXの台頭などもあり活気づく航空宇宙業界でも、高い精度が求められ、複雑な形をした多くの部品で先端素材が使用されることから、多くのプロセスを1台でこなす3Dプリンターが必要とされている。そして、大手航空宇宙機器メーカーは3Dプリンターを中心として、オートデスクADSKのような3D設計・モデリングソフトを手掛ける企業と提携して従来よりも軽量で高強度の3D造形の客室間仕切りを設計したり、航空宇宙製品・サービスを営むハネウエル・インターナショナルHONは旧型機の保守管理に必要な部品の在庫を減らすため、注文を受けて3D造形されたエンジン部品を使うことで多品種少量ニーズに効率的に対応している。
  •  このような経営環境の変化の下、1/7に3DシステムズDDDによる2020年10-12月期会社業績見通し発表以降、同社および同業のストラタシスSSYSの株価が動意付いている。一時的な思惑による動きではなく、グローバル経済のサプライチェーンに係る構造変化を表すものとして重要視されよう。(笹木)
  • 1/26号では、3Dシステムズ(DDD)、Lemonade Inc(LMND)、ネットフリックス(NFLX)、Virgin Galactic Holdings Inc(SPCE)、スプランク(SPLK)、台湾積体電路製造[TSMC](TSM)を取り上げた。

 

S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率1/22現在)

主な企業決算の予定

  • 126日(火):バリアンメディカルシステムズ、F5ネットワークス、マイクロソフトスターバックスアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、マキシム・インテグレーテッド・プロダクツ、WRバークレー、CHロビンソン・ワールドワイド、テキサス・インスツルメンツ、キャピタル・ワン・ファイナンシャル、アメリカン・エキスプレス、インベスコ、ベライゾン・コミュニケーションズ、ゼロックス・ホールディングス、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、ロックウェル・オートメーション、ゼネラル・エレクトリック(GE)ネクステラ・エナジー3MDRホートンフリーポート・マクモラン、レイセオン・テクノロジーズ、パッカー、プロロジス、ロッキード・マーチン、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド

 

  • 127日(水):ホロジック、エドワーズライフサイエンス、アップルテスラ、アメリプライズ・ファイナンシャル、クラウン・キャッスル・インターナショナル、ユナイテッド・レンタルズ、パッケージング・コープ・オブ・アメリカ、フェイスブック、サービスナウ、ラムリサーチラスベガス・サンズ、レイモンド・ジェームズ・ファイナンシャル、テラダイン、ストライカー、ワールプール、ナスダック、AT&T、VF、アンフェノール、ヘス、アボットラボラトリーズ、オートマチック・データ・プロセシング(ADP)、プログレッシブ・コープ、コーニング、ノーフォーク・サザン、ローリンズ、TEコネクティビティ、テキストロン、ボーイング、マーケットアクセス・ホールディングス、アンセム、ゼネラル・ダイナミクス、テレダイン・テクノロジーズ

 

  • 128日(木):ジュニパーネットワークス、ウエスタンデジタルアトラシアン、アーサー・J・ギャラガー、スカイワークス・ソリューションズ、ビザ、セラニーズ、レスメド、イーストマン・ケミカル、プリンシパル・ファイナンシャル・グループ、モンデリーズ・インターナショナル、アルトリア・グループ、ドーバー、Dow Inc、ウエストロック、スタンレー・ブラック・アンド・デッカー、バレロ・エナジー、コムキャストエクセル・エナジー、ノースロップ・グラマン、ペンテア、トラクター・サプライ、アビオメッド、アメリカン航空グループ、サウスウエスト航空、マスターカードマクドナルド、パルトグループ、ティー・ロウ・プライス・グループ、マコーミック、マーシュ・アンド・マクレナン、シャーウィン・ウィリアムズ、A.O.スミス、MSCI、ダナハー、ニューコア、NVR

 

  • 129日(金): チャーター・コミュニケーションズ、キャタピラー、シンクロニー・ファイナンシャル、コルゲート・パルモリーブ、フィリップス66、ローパーテクノロジーズ、ジョンソンコントロールズインターナショナル、ハネウェルインターナショナル、ライオンデルバセル・インダストリーズ、ウェアーハウザー、L3ハリス・テクノロジーズ、シェブロン、チャーチ・アンド・ドワイト、イーライリリー

 

  • 21日(月):エレクトロニック・アーツ、エヌエックスピー・セミコンダクターズ、オーチス・ワールドワイド、サーモフィッシャーサイエンティフィック

 

■主要イベントの予定

  • 126日(火)

・米FOMC(27日 まで)、IMFの世界経済見通し(WEO)改訂見通し

・米主要20都市住宅価格指数(11月)、FHFA住宅価格指数(11月)、消費者信頼感指数 (1月)

 

  • 127日(水)

米FOMC政策発表・パウエル議長記者会見、耐久財受注(12月)

 

  • 128日(木)

米新規失業保険申請件数(23日終了週)GDP(4Q)、卸売在庫(12月)、新築住宅販売件数(12月)、景気先行指標総合指数 (12月)

 

  • 129日(金)

・米ダラス連銀総裁の講演、個人所得支出(12)、雇用コスト指数(4Q)、中古住宅販売成約指数(12月)、ミシガン大学消費者マインド指数(1月)

 

  • 21日(月)

・マークイット製造業PMI(1月)、建設支出(12月)、ISM製造業景況指数(1月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

■銘柄ピックアップ

3Dシステムズ(DDD) 

市場:NYSE・・・2021/2/242020/124Q10-12月)の決算発表

・1986年に設立。世界で初めて3Dプリンターを製品化した立体画像メーカー。3Dプリティング及びデジタル製造ソリューションを提供。樹脂、金属、石膏などのマテリアルによる造形加工を展開。

・11/5発表の2020/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比13.0%減の1.35億USD、Non-GAAPの調整後純利益が前年同期の▲450万USDから▲410万USDへ赤字幅縮小。インダストリアル部門が同23.8%減収だったことが売上減に響いたが、コスト削減が調整後純利益の赤字幅縮小に寄与した。

・1/7に発表した2020/12期4Q(10-12月)の会社業績見通しは、売上高が前年同期比3-7%増の1.70億-1.76億USD(市場予想1.39億USD)、営業利益が▲860万-+50万USD(同▲1,650万USD)。また、ヘルスケア部門、インダストリアル部門ともに前四半期比20%増収の見通し。非中核事業の売却や担保付優先期間ローンの繰上返済など財務改善、および高採算事業へ選択・集中の方針だ。(李)

 

Lemonade IncLMND) 

市場:NYSE・・・2021/2/122020/124Q10-12月)の決算発表

・2015年設立。ソフトバンクG9984が約20%保有の筆頭株主(1/19現在)。アプリでの加入やAI活用で加入手続きを行うオンライン損保会社。欧米で賠償責任や家財保険を提供。昨年7/2に上場。

・11/10発表の2020/12期3Q(7-9月)は、再保険料会計処理の変更で総収益が前年同期比6.3%減の1,780万USD、純利益が前年同期の▲3,110万USDから▲3,090万USDへ赤字幅縮小。保険料総額が同99.1%増の1.89億USD、保険加入者数が同67.4%増、1人当たり保険料が同18.9%増だった。

・2020/12期4Q(10-12月)の会社計画は、再保険料の会計処理変更に伴い、売上高(中間値)が前年同期比21.3%減の1,800-1,900万USD。保険料総額が2.0-2.05億USD(同1.14億USD)。2020年末に保険加入者数が100万人のマイルストーンに到達したほか、オランダ・ドイツに続き昨年12月にフランス市場への参入を発表。成長戦略を財務面で支えるため1/15に公募・売出計画を発表。(李)

 

ネットフリックス(NFLX

市場:NASDAQ・・・2021/4/212021/121Q1-3)の決算発表

・1997年設立。テレビ番組・映画のインターネット配信のパイオニア。世界最大級のオンラインストリーミングサービスであり、2020年12月末時点の全世界の有料会員数は2億366万人に達する。

・1/19発表の2020/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比21.5%増の66.44億USD、純利益が前年同期の税還付計上の反動減により同7.6%減の5.42億USD。チェスを題材としたドラマ「クイーンズ・ギャンビット」のヒットにより、有料会員者数が3Q末比851万人増、前年末比21.9%増と拡大した。

・2021/12期1Q(1-3月)の会社計画は、売上高が前年同期比23.6%増の63.27億USD、純利益が同91.1%増の13.55億USD、1Q末世界有料契約者数が20年末比2.9%増。20年10月に実施した1USD超の値上げと会員数拡大の両立により、同社は通年の純現金収支が「ほぼトントンになる」とみるほか、同社CEOはNetflixがテレビ視聴時間の10%に満たないとし、成長余地を見込んでいる。(李)

 

Virgin Galactic Holdings IncSPCE

市場:NYSE・・・2021/2/212020/124Q10-12月)の決算発表を予定

・2004年設立。富裕層や研究者向けに有人宇宙飛行商業化を目指す世界初の宇宙旅行事業会社。18年12月、パイロット2名を乗せた試験飛行で高度82.7km以上の宇宙空間への到達に成功。

・11/5発表の2020/12期3Q(7-9月)は、売上高が2Qに続き無収入だが、宇宙旅行の予約受付に伴う預託金総額や株式追加売出により、3Q末の現金残高が同8.8倍の7.54億USD。同残高は前四半期比では2.0倍。一方で、純利益は前年同期の▲5,153万USDから▲7,695万USDへ赤字幅拡大。

・20年11月に実施予定でコロナ禍で延期されていた有人宇宙飛行が12/13に実施されたが、ロケットエンジンが点火せず再度延期となった。今年1Qに宇宙船「SpaceShipTwo」の2機目の飛行試験方針のほか、今年中に宇宙船の3機目を建造方針。同社CEOは、1機当たり年400回フライトで10億USDの売上見通しのほか、平均チケット価格を25万USDから40万USD以上へ値上げの公算を示した。(李)

 

スプランクSPLK

市場:NASDAQ・・・2021/3/42021/14Q2020/11-2021/1)の決算発表を予定

・2003年設立。顧客ユーザーに対し、ウェブサイト、アプリケーション、サーバー、ネットワーク、モバイル機器等から生成された機械データをリアルタイムで収集・分析するソフトウェアを提供する。

・12/2発表の2021/1期3Q(8-10月)は、売上高が前年同期比10.8%減の5.59億USD、Non-GAAPの調整後純利益が前年同期の9,113万USDから▲1.19億USDへ赤字転落。クラウドサービスは同80.0%増収だったが、ライセンス収入の同35.7%減収、および研究開発費用の増加が業績に響いた。

・2021/1期4Q(2020/11-2021/1月)の会社計画は、売上高が6.5-7.0億USD(前年同期7.91億USD)、調整後営業利益率が▲4-+3%(前年同期24.1%)と伸び悩みだが、毎年繰り返し発生する見通しの売上である年間経常収益を表す総ARRは同36.1-39.9%増の見通し。コロナ禍の影響見直しのため2023/1期までの中期経営目標を取り下げたが、クラウド普及の追い風は続くとみられる。(李)

 

台湾積体電路製造[TSMC]TSM

市場:NYSE・・・2021/4/152021/121Q1-3月)の決算発表を予定

・1987年設立。世界最大の専業ファウンドリーメーカー。同社製造の半導体は様々な半導体市場に亙り、モバイルデバイス、高性能コンピューター、車載エレクトロニクス、IoT等、各種アプリで使用。

・1/14発表の2020/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比22.0%増の126.76億USD、純利益が同31.7%増の50.08億USDと共に四半期で過去最高を更新。5Gスマホ、サーバー向けの需要が強く、5ナノ(1億分の1)メートル(nm)の売上構成比が3Qの8%から4Qの20%へ拡大と、増収に寄与。

・2021/12期1Q(1-3月)の会社計画は、売上高が同127-130億USD(前年同期103.06億USD)、為替の影響を除いた粗利率は50.5-52.5%(同51.8%)。2021年の設備投資は250-280億USDと、2020年実績の172億USDから大幅増額。同社は2021年のファンドリー業界の平均成長率10%を上回る成長を示したほか、2025年までの年平均予想増収率を従来の5-10%から10-15%へ引き上げた。(李)

 

(※)決算発表の予定は1/22現在であり、変更される可能性があります

 

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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