【米国ウィークリー 2021年1月13日号(2021年1月12日作成)】“「1月効果」と長期金利上昇に要注意”

 

”「1月効果」と長期金利上昇に要注意

  •  先週の米国ウィークリー2021年1月5日号では、「波乱含みの5・6日~押し目チャンスとなるか?」と題し、5日のジョージア州上院選決選投票と6日の上下両院合同会議の状況によっては相場が荒れる可能性に言及し、20日の次期大統領就任日までに押し目買いのチャンス到来を期待したなか、先ず、民主党の上院2議席獲得によるホワイトハウス、上下両院を民主党が制する「ブルーウェーブ」が実現することとなり、大規模なインフラ支出および追加景気対策への期待が高まった。次に、バイデン次期大統領を正式に選出する連邦議会の上下両院合同会議では、トランプ氏の支持者が議事堂内に乱入して建物を占拠し、会議が中断する波乱があったものの、次期大統領選出プロセスが迅速に終了したことから株式相場への波乱要因となることは無く、株式市場は強気の「ブルーウェーブ相場」の様相を継続。残念ながら押し目買いの機会とならなかった。
  •  また、次期バイデン政権の公約である増税(所得税や法人税の増税、およびキャピタルゲイン課税の税率引上げ)、反トラスト法の規制強化、および健康保険制度の拡充など株価への悪影響が大きいとみられる政策への懸念は未だ次期尚早として、金融市場で材料とは見なされなかった。これらは、次期政権発足後、一般教書演説や予算教書、および大統領経済報告といった「三大教書」の演説などを経て具体的な懸念として意識されるものであり、大統領就任式を控えた現時点では「いいとこどり」の相場展開が優先されやすいと言えよう。
  •  株式相場では、1月の収益率が他の月よりも高くなりやすい現象として「1月効果」という季節性のアノマリー(経験則)の存在が広く知られている。年末に税金対策としての売りが出る一方で、年明けには新規の投資資金が流入しやすいことがその要因と言われている。最近のNYダウ平均株価の推移では、2016年11月の大統領選の上昇相場が2018年1月下旬まで継続した後で数ヵ月間の株価下落局面に転換したこと、および昨年3月の新型コロナウイルス感染拡大に伴う下落相場の前に最高値を付けたのが同年2月上旬だったことが想起される。
  •  今月11日の米国債利回りは、バイデン次期政権下で政府支出が拡大するとの観測から10年物が15%近辺、30年物が1.88%近辺まで上昇。ブルームバーグによれば、NYダウ平均株価の2021年度市場予想年配当利回りが1.99%であることから、米国債30年物利回りが昨年2月以来の2.0%超えの水準まで上昇すれば、株価の上値を重くする可能性があろう。(笹木)
  • 1/13号では、アリスタネットワークス(ANET)、ビリビリ(BILI)、ライブ・ネーション・エンタテイメント(LYV)、メルク(MRK)、サーモフィッシャーサイエンティフィック(TMO)、ザ・トレードデスク(TTD)を取り上げた。

S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率1/8現在)

 

主な企業決算の予定

  • 113日(水): IHSマークイット
  • 114日(木)ブラックロック、ファースト・リパブリック・バンク、デルタ航空
  • 115日(金)シティグループウェルズ・ファーゴ、Jモルガン・チェース・アンド・カンパニー、PNCファイナンシャル・サービシズ・グループ

 

■主要イベントの予定

  • 112日(火)

・米3地区(ボストン、ダラス、ミネアポリス)連銀総裁・ボストン連銀総裁が講演

・米求人件数(11月)

 

  • 113日(水)

・米フィラデルフィア連銀総裁が講演、米地区連銀経済報告(ベージュブック)公表

米CPI (12)米財政収支 (12)

 

  • 114日(木)

・米ボストン連銀総裁が講演、米アトランタ連銀総裁がパネル討論会で司会、パウエル米FRB議長がウェブ会議に出席

米新規失業保険申請件数(9日終了週)、米輸入物価指数 (12月)

 

  • 115日(金)

米小売売上高 (12)、PPI (12月)、鉱工業生産 (12)、企業在庫 (11月)、ミシガン大学消費者マインド指数(1)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

■銘柄ピックアップ

アリスタネットワークス(ANET) 

市場:NYSE・・・2021/2/122020/124Q10-12月)の決算発表

・2004年設立。世界中の様々な業界に跨り、大規模データセンターやキャンパス向けにソフトウェアで制御されたクラウドネットワーキング・ソリューションを提供するネットワーク機器メーカー。

・11/2発表の2020/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比7.5%減の6.05億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同11.6%減の1.92億USD。サービス部門が同26.0%増収だったが、主力のプロダクト部門が前年同期の大型発注の反動減により同13.5%減収。利益面では研究開発費増が響いた。

・2020/12期4Q(10-12月)の会社計画は、売上高が6.15-6.35億USD(前年同期5.52億USD)、調整後粗利率が63-65%(同65.2%)。昨年10月にネットワーク・セキュリティのアウェイク・セキュリティを買収したほか、定額課金を導入した大企業向け新サービス「CloudVision as a Service」をローンチ。ネットワーク機器クラウド化の進展によりシスコシステムズCSCOからのシェア奪取が期待されよう。(李)

 

ビリビリBILI) 

市場:NASDAQADR・・・2021/3/172020/124Q10-12月)の決算発表

・2009年に設立。動画配信大手。投稿された動画に視聴者がコメント(bilibili弾幕網)を書き込む「中国版ニコニコ動画」として知られる。自作アニメ・ドラマ、ライブコマース、モバイルゲームなどを展開。

・11/18発表の2020/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比73.5%増の32.26億元の一方、調整後純利益が前年同期の▲3.45億元から▲9.71億元に拡大。売上粗利率が23.6%と6四半期連続で増加したが、ブランド構築マーケティング費用増により営業費用が同2.4倍増と嵩んだことが響いた。

・2020/12期4Q(10-12月)の会社計画は、売上高が36-37億元(前年同期:20.08億元)。3Qの月間課金ユーザー(MPU)は前年同期比89%増の1500万人となり、課金率は7.6%と同6.2%から上昇。20年6月、受験生をターゲットとして学習・知識・教養系コンテンツのみを集積した「知識区」をリリース。過去12ヵ月で同様の動画を視聴したユーザーが1億人に上る成長分野への期待が高まろう。(李)

 

ライブ・ネーション・エンタテイメント(LYV

市場:NYSE・・・2021/2/262020/124Q10-12)の決算発表

・2010年に設立の世界最大手のライブプロモーション企業。ライブコンサート、アーティスト・マネジメント、チケット販売(Ticketmaster.com)、広告・スポンサーの4部門で構成される。

・11/5発表の2020/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比96.0%減の1.84億USD、純利益が前年同期の1.79億USDから▲5.29億USDへ赤字転落。主力のコンサート部門が同95.1%減収(1.55億)だった。一方で、前四半期比では、2.5倍増収、純利益が▲5.67億USDからの赤字幅縮小と改善した。

・コロナ禍の影響が不透明として通期会社計画の公表を見送った。同社はライブコンサートの大部分を払い戻し可能の延期扱いとしたため、チケット代金の8割以上を返金せずに保有。それに加え、債権売却やリストラの敢行によるコスト削減実施でキャッシュを確保している。コロナ禍により延期されたダンスミュージックフェス「EDC Las Vegas」の全てのチケットも2021年に使用可能となった。(李)

 

メルク(MRK) 

市場:NYSE・・・2021/2/42020/124Q10-12月)の決算発表を予定

・1891年に独E.Merckの米国子会社として設立。バイオ医薬品のグローバルリーダー企業で医療用医薬品、ワクチン、バイオ医薬品、アニマルヘルス製品を提供する。140ヵ国以上で事業展開。

・10/27発表の2020/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比1.2%増の120.57億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同14.3%増の44.27億USD。ガン治療薬「キイトルーダ」が同21.0%増収、肺炎ワクチンの「ニューモバックス」が新型コロナ予防の需要増により同58.2%増収と、業績に寄与した。

・通期会社計画を上方修正。コロナ禍による売上高へのマイナスの影響を19.5億USDから23.5億USDとしたなか、売上高(仲値)を前期比2.7%増の476-486億USD(従来計画472-487億USD)、調整後EPS(仲値)を同14.8%増の5.91-6.01USD(同5.63-5.78USD)へ引き上げた。コロナ禍の影響を除けば同8-10%増収となる。新型コロナウイルス重症患者向けに治療薬「MK-7110」を開発中だ。(李)

 

サーモフィッシャーサイエンティフィックTMO) 

市場:NYSE・・・2021/1/212020/124Q10-12月)の決算発表を予定

・2006年にThermo ElectronとFisher Scientificが合併・発足した科学機器・試薬・分析大手。生命科学ソリューション、分析機器、特殊診断用製品、実験用製品サービスの4事業セグメントを営む。

・10/21発表の2020/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比35.9%増の85.21億USD、調整後純利益が同89.6%増の22.5億USD。新型コロナ検査関連収入(20億USD)を原動力に、生命科学ソリューションが同2.0倍増収、特殊診断用製品が同62.7%増収、実験用製品サービスが同18.8%増収。

・2020/12通期会社計画は、売上高が同19.5%増の305.2億USD、企業買収に伴うのれん償却などの影響を除く調整後EPSが同47.9%増の18.27USD。8/13、オランダの感染症検査大手キアゲン(QGEN)の株式取得が予定数に届かず、TOB断念を発表。世界的に新型コロナウイルス感染拡大が加速するなか、新型コロナ検査製品の製造拡大が進む同社への恩恵が大きいとみられる。(李)

 

ザ・トレードデスクTTD

市場:NASDAQ・・・2021/2/262020/124Q10-12月)の決算発表を予定

・2009年設立。デマンドサイドプラットフォーム(DSP)と呼ばれる広告向けソフトウエアプラットフォームを運営。人工知能を広告システムに活用し、広告主向けに効率的な広告提供で収益化を実現。

・11/5発表の2020/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比31.6%増の2.16億USD、Non-GAAPの調整後純利益が同73.6%増の6,266万USD、調整後EBITDAが同61.6%増(7,716万USD)。TVとネットを組み合わせたコネクテッドTV、モバイルビデオ、オーディオのチャンネルの増収が業績に寄与した。

・2020/12期4Q(10-12月)の会社計画は、売上高が2.87-2.91億USD(前年同期:2.16億USD)、調整後EBITDAが1.15億USD以上(同8,355万USD)と、コロナ禍に伴う巣ごもり需要増を見込む。市場シェア拡大を目指すなか、年内に広告購入プラットフォームを大規模にアップグレードした「Solimar」をリリースする方針。電通によると、デジタル広告市場は年率2ケタ台での成長が続く見通しだ。(李)

 

(※)決算発表の予定は1/11現在であり、変更される可能性があります

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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