【米国マンスリー 2020年8月号(2020年7月29日作成)】“ドル・金相場など株式の周辺に大きな動きあり”

 

■ドルインデックスと実質金利

ユーロ・円・ポンド・スイスフランなど複数の主要国通貨に対する米ドル相場を指数化したドルインデックスの終値は3/20の年初来高値102.81から下落し、7/27に93.66を付けた。この下落の背景には名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利の低下があると考えられる。実質金利は米国物価連動国債10年物(TIPS)利回りに近似していると見られており、特に今年3月以降は相関性を強めているように見受けられる。2018年1月につけた過去5年間の終値の最安値88.67が当面の下値の目処と言えよう。

ドルインデックスと実質金利~実質金利低下がドル相場下落に繋がるか?

 

■FRBバランスシート拡大と資産価格

FRBのバランスシート総額は昨年8月末の3兆8,078億ドルから拡大傾向にあったが、コロナ禍に対応するため無制限に米国債などの資産を買い入れる金融緩和策への方針転換により拡大ペースが加速化した。このことが米国株における3月下旬以降の上昇の主な原動力になったと考えられる。FRBバランスシート総額は6月第2週に7兆2,176億ドルまで拡大後、2週連続で縮小しその後は7月第2週に6兆9,693億ドルまで縮小。株価も上昇が一服し概ね横ばいで推移している。

また、直近の金先物価格は2011-12年の水準に並んだが、FRBのバランスシートは当時の2倍以上に膨らんだ。当時の金先物価格が短期的に買われ過ぎだった面があるとしてもバランスシート額との比較では金先物価格が割安な面もあろう。

【FRBバランスシート拡大と資産価格~米国株価および金価格への影響に注目】

 

■金先物と銀先物の動向

過去9年のCMX金先物価格と投機筋の建玉買い越し枚数の推移を見ると、現在と同価格水準だった2011年7月頃と比較して現在は投機筋の先物建玉買い越し枚数が大きいことが分かる。買い越し枚数と金先物価格のピーク・ボトムは概ね一致する傾向が見られるが、今年の2月から6月にかけて買い越し枚数が減少するなかで金先物価格が上昇。買建玉が将来の売り要因であることを考慮すると良好な需給を維持していると言えよう。

また、CMXの金先物価格を銀先物価格で割った倍率は、今年の3/18に125倍のピークを付けた後で低下傾向に転じている。銀は太陽エネルギーなどの産業需要もあり、各国政府が推進するクリーンエネルギーのプロジェクトへの期待や思惑で買われている面もあろう。

【金先物と銀先物の動向~金先物のポジションと対銀先物価格倍率に注目】

 

■ナスダックは実質金利と逆相関

ナスダック総合指数を米国の代表的な株価指数であるS&P500で割った倍率は、今年3月以降、米国物価連動国債10年物(TIPS)利回りと逆相関の関係が見られる。TIPSの利回りは名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利とほぼ等しく、実質金利が低下するほど物価調整後の実質的借入コストが低下することから、TIPS利回りの低下が投資意欲が旺盛で資金調達ニーズが強いIT企業やバイオテクノロジー企業などの成長企業への恩恵となっていると見られる。

7/14発表の6月の米消費者物価指数は食品とエネルギーを除いたコア指数が前年同月比1.2%の緩やかな上昇にとどまったが、金融緩和強化や財政支出拡大を織り込んで将来に向けた期待インフレ率が上昇しているものと見込まれる。

ナスダックは実質金利と逆相関~成長株投資の鍵を握るインフレ期待の高まり

 

■NYSE_FANGプラス指数が堅調

米国株式市場の中でもナスダック総合指数が他の主要株価指数を上回る堅調さを示している。ナスダック総合指数を米国の代表的な株価指数であるS&P500で割った倍率は、7/9に3.34倍となった。これはITバブル、ドットコムバブルと言われた2000年3月以来の高水準である。

ナスダック総合指数の終値が年内最安値を付けた3/23以降の上昇率で、同指数を上回っているのがNYSE FANGプラス指数である。FAANG銘柄を中心にテスラ(TSLA)、エヌビディア(NVDA)を含む10銘柄で構成されるNYSE FANGプラス指数は、アリババ集団(BABA)を除く9銘柄がナスダックの構成銘柄である。米国株の物色が巨大IT企業を中心とした特定の少数銘柄に偏り過ぎている点は、相場の持続性の点では懸念材料と言えよう。

NYSE FANGプラス指数が堅調~ナスダック総合指数/S&P500倍率も高水準

 

■米中対立の香港市場への影響

5/27に指数算出会社MSCIが同社指数を基にしたデリバティブ商品のライセンスをシンガポール取引所(SGX)から香港取引所に移すと発表。SGXの株価が急落した一方、香港取引所の株価は上昇した。米中対立激化を背景に香港からシンガポールへアジアの国際金融センターの主導権が移るのではないかという懸念に対し、金融ハブとしての香港の魅力を再認識させることとなった。

香港ドル発券銀行である英銀のHSBCホールディングスとスタンダードチャータードは、米国に足並みを揃えて香港国家安全法の制定に反発する英政府からの厳しい目を警戒しつつも、中国政府施行の香港国家安全法へ支持を表明。米中対立下でも香港市場に金融ビジネスの魅力があると言う面が窺がわれよう。

米中対立の香港市場への影響~対SGXでの優位性、香港の銀行は微妙な立場

 

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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