【投資戦略ウィークリー 2021年11月22日号(2021年11月19日作成)】”アクティビストの動き活発化、完全自動運転”

 

■”アクティビストの動き活発化、完全自動運転”

  •  シティインデックスイレブンスなど旧村上ファンド系、イギリスのシルチェスター、香港を中心とするオアシス・マネジメントなど、アクティビスト(物言う株主)の動きが活発化している。ゼネコンなど建設関連株を買い増し、最近では西松建設1820安藤ハザマ1719など準大手ゼネコンを標的として自社株買いTOBや大幅増配など大胆な株主還元強化へ追い込んだ。シティは11月に入り、日本製鉄系の大平洋金属5541への買増しを展開している。

 

  •  基本的にはキャッシュリッチで株価が割安に放置されている銘柄が狙われている。村上世彰氏は著書「生涯投資家」で、「ファンドで投資する銘柄を選ぶ際、時価総額に占める現預金の割合、PBR、株主構成などを点数化してスクリーニングをする」と述べている。更に、財務の健全性を重視しつつ売上が落ちるタイミングが投資のチャンスと見られているようである。配当や自社株買いなど株主還元の余力として、時価総額をネットキャッシュ(現金・預金+短期有価証券-前受金-有利子負債)で割った「ネットキャッシュ倍率」が使用されることが多いようだ。特に足元のゼネコン各社は、財務の健全性が高い中で東京五輪の関連工事がピークアウトしたことに加えて、新型コロナの影響を受けて受注・売上が低調になりがちな点もアクティビストに狙われやすい要因だろう。

 

  •  また、ゼネコン業界の談合体質といった企業統治面も、業界のプレーヤーが多過ぎることが問題として投資先企業同士の合併など再編を仕掛けやすいことに繋がり、それを引き金にして投資利益を増やすことも、アクティビストの常套手段の1つと言えよう。

 

  • ゼネコンの中でも、大成建設1801は、炭酸カルシウムでCO2を閉じ込めるコンクリート技術を開発したほか、子会社の大成ロテックが北海道の會澤高圧コンクリートと共同で、ひび割れが自然に修復する「自己治癒型アスファルト」塗装を研究中であり、今年度に試験施工の予定と技術開発に注力する動きもある。技術開発や海外展開強化に向けて業界再編が必要となる可能性もあろう。

 

  •  通信半導体の米クアルコム(QCOMが次世代運転支援や自動運転システム向けなどに関する売上拡大の見通しを示したのに加えて、米アップル(AAPLが電気自動車(EV)開発で完全自律運転機能を開発プロジェクトの中心に据えていると報じられた。子会社のJRCモビリティを通じて3次元位置情報と速度情報を同時に検出する技術を有する日清紡HD3105、および自動運転に必要な地図情報を扱うゼンリン9474の出番も近いかもしれない。(笹木)

 

11/22号では、戸田建設(1860)、竹内製作所(6432)、アドバンテスト(6857)、日東電工(6988)、ウィルマー・インターナショナル(WIL)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 1122日(月):(米)ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ
  • 1123日(火):(米)アナログ・デバイセズ、メドトロニックダラーツリー、オートデスク
  • 1125日(木):タカショー、菱洋エレクトロ
  • 1126日(金): ダイドーグループHD、(米)ピンドゥオドゥオ

 

主要イベントの予定

  • 1122日(月)

・中国ローンプライムレート(LPR、11月)、米通商代表部(USTR)代表がインド訪問

・米中古住宅販売件数(10月)、ユーロ圏消費者信頼感指数 (11月)

 

  • 1123日(火)

・EU一般理事会

・マークイット米製造業・サービス業・総合PMI (11月)、マークイット・ユーロ圏製造業・サービス業・総合PMI(11月)

 

  • 1124日(水)

・サイエンスアーツとラストワンマイルが東証マザーズに新規上場、じぶん銀行日本PMI製造業・サービス業・コンポジット(11月)

・米FOMC議事要旨(2、3日開催分)、NZ中銀が政策金利発表、アジア・グローバルヘルス・サミット (ASGH、香港、ハイブリッド形式)

・米卸売在庫(10月)、米新規失業保険申請件数 (20日終了週)、米GDP(3Q)、米耐久財受注(10月)、米新築住宅販売件数(10月)、米個人所得・支出 (10月)、米ミシガン大学消費者マインド指数(11月)、独IFO企業景況感指数(11月)、シンガポールGDP(3Q)

 

  • 1125日(木)

・新生銀行が都内で臨時株主総会を開催、スローガンが東証マザーズに新規上場、企業向けサービス価格指数(10月)、景気先行CI指数・景気一致指数(9月)、全国百貨店売上高(10月)、東京地区百貨店売上高(10月)、工作機械受注(10月) 、月例経済報告(11月)

・米株式・債券市場が休場(感謝祭の祝日)、ECB議事要旨、ECB総裁らがEUの司法関連会議(26日まで)に参加、英中銀総裁がイベントでモハメド・エラリアン氏と対談、スウェーデン中銀が政策金利発表、韓国中銀が政策金利発表、アジア欧州会議(ASEM)首脳会議(議長国カンボジア、26日まで)、EU競争力担当相理事会(域内市場・産業)、香港行政長官が基本法について講演(オンライン)

・独GDP(3Q)

 

  • 1126日(金)

・東京CPI(11月)

・米感謝祭翌日の金曜日「ブラックフライデー」、米株式・債券市場が短縮取引、EU競争力担当相理事会(研究・宇宙)

・ユーロ圏マネーサプライ(10月)、台湾GDP(3Q)

 

  • 1127日(土)

・中国工業利益(10月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

アマゾン・ドット・コムの事業構成

アマゾン・ドット・コムAMZNの10/28発表の2021年7-9月期決算は、インターネット通販事業が減速する中で世界的なサプライチェーン混乱への対応でコストが嵩んだことが響き、純利益が前年同期比50%減だった。これを受けて翌29日には株価が下落したものの、その後の株価は戻り基調となっている。

四半期ごと推移では、営業キャッシュフロー(CF)がオンライン店舗事業や第三者セラー向けなどEコマース関連収益に連動して軟調に推移。その一方、クラウドコンピューティングのAWS(アマゾン・ウエブ・サービス)事業、アマゾン・プライム・ビデオなどに係るサブスクリプション事業、およびネット広告事業を中心とするその他事業の急成長が株価の下支え要因になっている面が大きいだろう。

【アマゾン・ドット・コムの事業構成~AWS・サブスクリプション・その他が伸長】

 

■農作物や木材価格、海運指数

パーム油、小麦、大豆、天然ゴムなど農作物の価格は総じて今年5月以降に調整局面となっていたが、バイオディーゼル用途として石油由来の輸送燃料と競合するパーム油は原油価格高騰の影響で引き続き堅調に推移。また、主要穀物の中では、大豆やトウモロコシと比べて小麦の国際価格の高騰が目立つ。米国やカナダなど主要生産国の減産観測に加えて、主産地のロシアが小麦価格の上昇に備えて輸出税の引き上げを検討していることもその要因とされている。

一方、CME木材先物価格は「ウッドショック」で今年5月まで急騰した後に急落し、昨年後半並みの水準で推移。穀物や鉄鉱石などのバラ積み船運搬の運賃に係るバルチック海運指数も急落。今後のコモディティ相場は要注意だろう。

【農作物や木材価格、海運指数~パーム油と小麦は高いが総じて落ち着く】

 

■準大手ゼネコンがファンドの標的

準大手ゼネコンの西松建設1820は10/29に配当予想の増額修正を発表。当期の年間配当を221円(前期実績105円)とした。その前に株主還元を巡って対立した「物言う株主」のファンドなどから自社株のTOB(公開買付)も行っていた。また、安藤ハザマ1719も香港を拠点とする投資ファンドのオアシス・マネジメントからの要求に応じ、大規模な自社株に続いて年間配当の増配を決めた。

ゼネコン各社は東日本震災関連の復興工事や国土強靭化関連の補正予算などの恩恵を受けやすい一方、請負業という事業の特徴として製造業のように設備投資などの資金負担が必要ないことから投資ファンドに狙われやすい面もある。洋上風力発電やCO2の回収・貯留など新技術への投資拡大が求められよう。

【準大手ゼネコンがファンドの標的~西松建設と安藤ハザマへ株主還元要求】

■銘柄ピックアップ

戸田建設1860)  

720 円(11/19終値)

・1881年創業。国内建築事業、国内土木事業、投資開発事業、新領域事業(浮体式洋上風力発電事業を含む)、および海外事業を主な事業とし、その他各事業に関連するPFI事業などを展開。

・11/15発表の2022/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比9.8%増の2,355.74億円、営業利益が同40.8%増の85.98億円。土木事業において好採算の工事増加、および投資開発事業で不動産事業収益増が営業増益に貢献。投資有価証券受取配当金の寄与もあり経常利益も同44.2%増。

・通期会社計画は、売上高が前期比1.6%増の5,150億円、営業利益が同14.8%減の236億円。インフラ整備を中心に公共投資が期待される一方、利益面で供給制約に伴う工事進捗度への影響を考慮。今年6月、長崎県五島市沖海域での浮体式洋上風力発電の共同事業者6社の内1社に選定された。アクティビストが大株主に名を連ねるなか、株主還元要求への対応継続が求められよう。

竹内製作所6432)  

2,969 円(11/19終値)

・1963年設立。建設機械の製造・販売を行う。主要品目はミニショベル、油圧ショベル、クローラーローダーで海外売上高比率が約98%。廃水処理施設、化学・食品業界向けに攪拌機も手掛ける。

・10/7発表の2022/2期1H(3-8月)は、売上高が前年同期比39.6%増の742.28億円、営業利益が同46.1%増の99.58億円。製造コスト上昇や運搬費などの増加があったものの、欧米で生活インフラ公共事業が活況。特に米国で新築・増改築など住宅関連工事増により製品需要が好調に推移。

・通期会社計画は、売上高が前期比19.4%増の1,340億円、営業利益が同7.5%増の142億円。同社は長野県を地盤とするなか、重さ6トン未満の建機「ミニショベル」を世界初で開発。コマツ6301など大手が得意とする20トンクラスに比べて大型工事には向かないが、都市部の住宅や水道の工事で活躍。米国で可決の1兆ドル規模インフラ投資法案でも、生活インフラ向けが重視されている。

 

アドバンテスト(6857

10,430 円(11/19終値)

・1954年にタケダ理研工業として設立。半導体・部品試験装置や電子計装機器の製造を行う。大規模集積回路(LSI)・メモリーテストシステム、ネットワーク分析器、光計測器製品等の製品を含む。

・10/28発表の2022/3期1H(4-9月)は、売上高が前年同期比30.5%増の1,879.90億円、営業利益が同53.5%増の474.76億円。データセンター、AI、PC、5Gスマホ向けなど幅広い分野の半導体の高機能化と需要増に伴い、半導体試験装置の需要も全方位的に伸長し、受注高が同2.9倍へ拡大。

・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比27.9%増の4,000億円(従来計画3,850億円)、営業利益を同48.5%増の1,050億円(同1,000億円)とし、受注高も同70.9%増の5,650億円(同4,000億円)とした。半導体試験装置世界首位の米KLAが7-9月期決算発表で半導体製造前工程(WFE)において供給制約後のペントアップ(繰越)需要に言及。KLAと比べて同社株価に出遅れが見られる。

 

日東電工(6988  

8,830 11/19終値

・1918年に設立。基盤機能材料などを扱うインダストリアルテープ、情報機能材料などを扱うオプトロニクス、医療関連材料のライフサイエンス、高分子分離膜などを手掛けるその他の4部門を営む。

・10/26発表の2022/3期1H(4-9月)は、売上収益が前期比19.1%増の4,259.51億円、営業利益が同71.8%増の728.08億円。ノートPCやタブレット端末用光学フィルム、スマホ用高精度基板、自動車材料や一般工業部材、半導体関連部材が堅調の他、核酸医薬の創薬でマイルストーンを達成。

・通期会社計画を上方修正。売上収益を前期比11.0%増の8,450億円(従来計画7,850億円)、営業利益を同34.3%増の1,260億円(同1,050億円)とした。世界的な新型コロナワクチン不足のなか、核酸受託製造で同ワクチンに使用される「核酸免疫補強材」の供給を開始。また、核酸合成用ポリマービーズの需要拡大など、新型コロナワクチン普及がライフサイエンス事業への追い風となろう。

 

ウィルマー・インターナショナル(WIL

市場:シンガポール  4.27 SGD 11/18終値)

 

・1991年設立のアジアを代表する農業ビジネスグループであり、消費者向け食用油の生産では世界最大規模。栽培から加工、製品化まで農業ビジネスのバリューチェーン全体を網羅している。

・10/29発表の2021/12期3Q(7-9月)の業績報告は、売上高が前年同期比28.7%増の171.34億USD、純利益が同6.0%増の5.68億USD。飼料および工業製品部門の販売数量は減少したが、マージン向上のほか、商品相場上昇にによりプランテーション・製糖関連の利益が堅調に推移した。

・中国向け売上高が全体の50%超を占める同社の業績に対し、中国不動産開発業界の資金繰り問題が懸念を高めやすい面があるなか、事業セグメント構成が多角化されて相互の弱点を補完し合える点は強みとなろう。また、原油価格の高騰がパーム油など農産物価格を押し上げており、パーム油は過去最高値圏、砂糖原料の粗糖も2017年以来の高値を付けるなど追い風が続こう。

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

11/22号「シンガポールのウエルスマネジメント業」

アジアの富裕層が、香港国家安全維持法の制定に伴って中国政府の影響が強まった香港からシンガポールに資産を移動させる動きが拡大しているといった話が聞かれる。実際に、シンガポールの銀行の業績に富裕層ビジネスの拡大傾向が示されている。

DBSグループ・ホールディングス(DBS)、ユナイテッド・オーバーシーズ(UOB)、オーバーシー・チャイニーズ(OCBC)の上位3行の2021年1-9月期決算におけるウエルスマネジメント業務の営業収益を見ると、DBSが前年同期比23.2%増の14.06億SGD、UOBが同22.4%増の6.39億SGD、OCBCが同13.4%増の30.42億SGDといずれも堅調な推移を示している。管理資産が香港から移動されたのかは不明だが、シンガポールは通貨高政策により投資マネーの流入を促している面も大きいだろう。

 

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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