【投資戦略ウィークリー 2021年8月16日号(2021年8月13日作成)】”東証の市場再編~プライムを巡る動きとTOPIX見直し”

 

■”東証の市場再編~プライムを巡る動きとTOPIX見直し”

  •  2022年4月に予定される東証の既存4市場の廃止、および新たに「プライム・スタンダード・グロース」の3市場の開設といった市場再編に向けて、東証は今年6/30を市場の区分判定の基準日として、4-6月の終値平均に基づいた流通株式時価総額などから上場企業に対して各市場への適合状況を7/9に通知。どの市場に行くかは今年9-12月に企業自身が判断して東証に申請。基準未達なら改善計画書の提出が求められる。22年1月に企業の市場選択結果を東証が開示した後、22年4月に新市場区分へ移行予定。

 

  •  プライム市場に入るには、流通株式比率が35%以上、流通株式時価総額が100億円以上などが条件となる。流通株式数とは、上場株式数から、10%以上所有の大株主所有の株式、役員等(特別利害関係者を含む)、自己株式、国内の普通銀行・保険会社・事業法人等が所有する株式(保有目的が純投資であるものを除く)、その他取引所が固定的と認める株式を除いた株式数のことを指し、従来よりも政策保有株式など、上場株式数から差し引かれる株式数の範囲が拡大。JASDAQスタンダード上場のフェローテックHD6890、東証2部上場の千代田化工建設6366ヨネックス7906などはプライムへの昇格が有力視されている。一方で、プライム入りに向けてトヨタ紡織3116は大株主のトヨタ自動車7203に自社株を売却してもらったほか、大株主の保有株を取引時間外に売り出す「立会外分売」を実施する企業も相次いだ。

 

  •  上場企業がプライム市場から除外されたとしても、直ちにTOPIX(東証株価指数)から除外されることを意味するわけではない。流通株式時価総額100億円未満の企業が段階的に指数から除外されていくことから、予定されるTOPIX見直しは市場区分と切り離して運用されることとなる。22年4月1日の構成銘柄は新市場区分施行後も継続採用されるが、流通株式時価総額100億円未満の銘柄は「段階的ウェイト低減銘柄」に指定され、22年10月末日から四半期ごとに10段階(2025年1月末まで)に分けて構成比率が逓減される。その中でも、23年10月に実施される「再評価」で流通株式時価総額が100億円以上、かつ年間売買代金回転率が2回転以上であれば、通常と同じウェイトでTOPIXに組み入れられる。

 

  •  また、市場再編に係る上場基準の見直しによってスタートアップ企業のIPOのハードルが高くなることも想定されることから、新規上場の場としてプロ投資家向けの市場であるTOKYO PRO Market(TPM)も注目されよう。(笹木)

 

8/16号では、日鉄ソリューションズ(2327)、太平洋セメント(5233)、新日本電工(5563)、ヨネックス(7906)、ジャーディン・マセソン・ホールディングス(JM)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 816日(月):アイスタイル、エン・ジャパン、スカラ、ダイオーズ、ハークスレイ、ハウスドゥ、ユー・エム・シー・エレクトロ、東京エレクトロン、東京産業、片倉コープアグリ、理研ビタミン
  • 817日(火): パン・パシフィック・インターナショナルHD、(米)ウォルマートホーム・デポ
  • 818日(水): あいHD、(米)シスコシステムズ、シノプシス、エヌビディアターゲット、アナログ・デバイセズ、ロウズ、キーサイト・テクノロジーズ
  • 819日(木):(米)アプライド・マテリアルズ、ロス・ストアーズ
  • 820日(金):(米)ディア

 

主要イベントの予定

  • 816日(月)

GDP(2Q)・速報値、鉱工業生産(6月)

・米韓合同軍事演習 (26日まで)

・対米証券投資(6月)、米ニューヨーク連銀製造業景況指数(8月)、中国工業生産・小売売上高・都市部固定資産投資(7月)、 中国新築住宅価格(7月)

 

  • 817日(火)

・第3次産業活動指数(前月比) (6月)

米パウエルFRB議長がタウンホール会議を開催中国全人代常務委員会(20日まで)

米小売売上高(7月)、米鉱工業生産(7月)、米NAHB住宅市場指数(8月)、米企業在庫(6月)、ユーロ圏GDP(2Q)、英ILO失業率(4-6月)

 

  • 818日(水)

・貿易収支(7月)、コア機械受注(6月)、訪日外客数(7月)

米FOMC議事要旨 (72728日開催分)、NZ中銀が政策金利発表

米住宅着工件数(7月)、ユーロ圏CPI(7月)、英CPI(7月)

 

  • 819日(木)

・対外・対内証券投資 (8月8-14日)、ブルームバーグ 日本経済調査(8月)、首都圏新築分譲マンション(7月)

・ノルウェー中銀とインドネシア中銀が政策金利発表

米新規失業保険申請件数(14日終了週)、米景気先行指標総合指数(7月)、豪雇用統計(7月)

 

  • 820日(金)

・シイエヌエスとフューチャーリンクネットワークが東証マザーズに新規上場、全国CPI(7月)

・中国のローンプライムレート(LPR、8月)

 

  • 822日(日)

横浜市長選の投開票

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

米インフラ投資計画が上院可決

8/10、米議会上院が5年間で約5,500億ドルの新規支出を含む1兆ドル規模の超党派インフラ投資法案を可決。米国の橋の4割は建造から50年以上たち、約7.5%が構造的欠陥の可能性を指摘されるなか、「道路、橋梁整備プロジェクト」は新規支出で最大となる1,100億ドルが充てられた。新規支出は電力グリッド網、高速ブロードバンド網整備、水道インフラ整備などを含む。その一方、民主党は、コミュニティカレッジの無償化、保育支援拡充、有給休暇拡充、環境に優しい技術への税優遇措置などを盛り込んだ3.5兆ドル規模の法案についても「財政調整措置」を使って単純過半数での可決を目指しているものの、難航が予想される。

関連銘柄で騰落率が主要指数を下回っている銘柄は見直しの余地があろう。

【米インフラ投資計画が上院可決~3.5兆ドル規模の米家族計画は難航か】

 

■新型コロナ新規陽性者数の動向

新型コロナのデルタ変異株の感染拡大が続くなか、新規陽性者数の7日平均では、発生源とされるインド、ドイツに続き、ブラジル、イギリスはピークアウト。その一方で米国は増加が加速している。ただし、イギリスは8月に入り増加の兆しがみられる。また、アセアンの新規陽性者数の7日平均では、インドネシアの急増はピークアウトしたが、タイとマレーシアは同様のペースで増加が加速している。

新規陽性者数の7日平均を人口10万人当たりで見ると、イギリス、米国、タイ、マレーシア、インドネシアが30-50人の範囲に収斂しつつあることが分かる。東京都も、8/12の新規陽性者数が4,200人であり、人口10万人当たりでは約30人となることから、これらの国と同水準の感染拡大ペースに達していると言えるだろう。

【新型コロナ新規陽性者数の動向~英米とアセアンは同水準に向かう傾向】

 

■コンテナ船運賃と航空貨物動向

米小売業の注文増加、新型コロナ感染拡大に伴う港湾の人手不足によるコンテナの回転率低下などの影響を受けて上海発・ロサンゼルス向け40フィート・コンテナ・ボックスの運搬標準運賃は足元で1万ドルを超えた。実勢運賃では2万ドル超えも見られた模様。これは幅広い業界でコスト増要因となる一方、海運業者には追い風だ。コンテナ船運賃と海運株の株価には高い相関関係が見られる。

海上輸送のコンテナ不足に伴う積み残しへの対応として貨物を航空機で運送する動きが活発となりやすい。日本発航空貨物輸出量(混載貨物)は、今年6月が前年同月比63%増、前月比28%増と伸びた。近鉄エクスプレス(9375)といった国際航空貨物物混載大手の株価推移との高い相関関係が示されている。

【コンテナ船運賃と航空貨物動向~代表的な関連銘柄の株価動向に直結】

 

■銘柄ピックアップ

日鉄ソリューションズ2327

3,670 円(8/13終値)

・1980年に新日鉄を親会社として設立。日本製鉄5401グループのシステムインテグレーターだが、売上高の約8割は親会社以外の企業・官公庁向けシステム開発・コンサルティングが占める。

・7/30発表の2022/3期1Q(4‐6月)は、売上高が前年同期比15.7%増の655.19億円、営業利益が同40.0%増の71.42億円。産業・流通向けソリューション、金融向けソリューションおよび公共公益向けソリューションから構成される業務ソリューション事業の売上高が同23.8%増の432億円と伸長。

・通期会社計画は、売上高が前期比5.2%増の2,650億円、営業利益が同3.9%増の255億円。今年4月より「デジタル製造業センター」を設置して製造業顧客のデジタル変革(DX)推進支援を進めるほか、電子契約サービス「コントラクトハブ」の商業・法人登記オンライン申請での利用開始といったデジタルワークプレース、プラットフォーマー支援、およびITアウトソーシングを注力領域としている。

 

太平洋セメント5233) 

2,644 円(8/13終値)

・1998年に秩父小野田セメントと日本セメントが合併して設立。セメントや生コンクリートのセメント事業、骨材や石灰石製品の資源事業、環境事業、建材・建築土木事業、およびその他事業を営む。

・8/10発表の2022/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比20.4%減の1,569.12億円、営業利益が同41.2%増の99.19億円。「収益認識に関する会計基準」適用により減収だったが、米国西海岸のセメント事業が堅調な住宅需要を背景にセメント販売数量・価格ともに伸びたことが増益に貢献。

・通期会社計画は、売上高が前期比17.7%減の3,460億円、営業利益が同3.9%減の251億円。コロナ禍の下で国内の設備投資・住宅投資が抑制される可能性や建設・物流業界の人手不足等から営業減益を想定。一方で、8/10に米議会上院で超党派による1兆ドル規模のインフラ投資法案が可決。大きな予算が充てられた「道路、橋梁プロジェクト」などからのセメント需要が期待されよう。

 

新日本電工(5563

328 円(8/13終値)

・1934年設立の鉄鋼向け合金メーカー。筆頭株主である日本製鉄5401のグループ企業であり、主力の合金鉄(フェロアロイ)の製造・販売のほか、機能材料、環境、電力、その他の事業を展開。

・8/11発表の2021/12期1H(1-6月)は、売上高が前年同期比12.7%増の309.47億円、経常利益が同14.2%減の26.70億円。合金鉄事業にて前年同期の棚卸資産評価損の戻入れ計上の反動減で経常減益だが、主力製品の高炭素フェロマンガンは販売数量増のほか製品市況も堅調に推移。

・通期会社計画を上方修正。売上高を前期比20.4%増の650億円(従来計画640億円)、経常利益を同79.6%増の55億円(同40億円)とし、年間配当を前期の5.00円から8.00円へ増配とした。合金鉄事業の堅調な推移が見込まれるほか、機能材料事業では、国内首位の水素吸蔵合金、および住友金属鉱山5713からのリチウムイオン電池正極材の製造受託事業の伸びが期待されよう。

 

ヨネックス(7906  

753 8/13終値

・1958年にバドミントンラケット製造・販売の米山製作所を設立。主にバドミントン、テニス、ゴルフのスポーツ用品の製造・仕入・販売のほか、関連スポーツ施設運営を行う。バドミントンは世界首位。

・8/10発表の2022/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比97.3%増の161.78億円、営業利益が前年同期の▲14.02億円から13.14億円へ黒字転換。中国でバドミントン中国代表チームとの契約の話題を活かしたバドミントン用品販売増のほか、国内でもコロナ感染対策を講じて需要を喚起した。

・通期会社計画は、売上高が前期比31.9%増の680億円、営業利益が同3.9倍の40億円。同社ブランドはバドミントンの世界市場で高い支持を得るなか、テニスでも同社契約選手の大坂なおみやワウリンガなどの活躍によりラケット性能への信頼を高め、グランドスラム大会での同社ラケット使用率が上昇傾向。また、ゴルフもコロナ禍で社会的距離を確保しやすいスポーツとして人気上昇中だ。

 

ジャーディン・マセソン・ホールディングス(JM) 

市場:シンガポール  56.91 USD8/12終値)

・1832年に中国の広州でイギリス貿易商社のジャーディン・マセソン商会として設立された世界最大級の国際コングロマリット。幕末日本で長州藩など討幕派や坂本竜馬を支援し明治維新を後押し。

・7/29発表の2021/12期1H(1-6月)は、売上高が前年同期比10.0%増の179.42億USD、投資用不動産の公正価値変動額といった非トレーディング項目を除く基礎的利益は同64.9%増の6.15億USD。コロナ禍による落ち込みからの回復のほか、傘下の中間持株会社非公開化も増益に寄与。

・事業ポートフォリオの積極的なマネジメントのためグループ企業の資本再編に注力。中間持株会社(ジャーディン・ストラテジックHD)の非公開化に続き、今年7月に中国の高級自動車輸入販売大手のチョンサングループと戦略的資本業務提携協定を締結。中国本土で展開するメルセデス・ベンツのディーラー販売網を譲渡する代わりに、同グループへの出資比率を21.25%へ引き上げた。

 

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

8/16号「中所得国の罠からの脱却へ~マレーシア」

マレーシアはシンガポールとともに早くからインターネットの普及が進み、情報通信・IT産業が発展していた。その背景として、同国は2020年までの先進国入りの目標を掲げて、1996年に「マルチメディア・スーパーコリドー(MSC)」計画を承認し、首都クアラルンプール郊外に行政都市「プトラジャヤ」や情報産業都市「サイバージャヤ」といった人工テクノロジー都市を建設するなど、先進的な取り組みを行っていたことがある。アセアン屈指の情報通信先進国であるシンガポールでは、シンガポール・テレコムとその過半数株主の政府系投資会社テマセク・ホールディングスがタイ・フィリピン・インドネシア・インドの通信事業会社に戦略的投資を行っているのに対し、マレーシアは国内人口が多くない割に有力通信事業者が厳しい競争を繰り広げていることで不利な面がみられる。

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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