【投資戦略ウィークリー 2021年7月19日号(2021年7月16日作成)】”五輪時のコロナ感染拡大リスク、日本食グローバル化”

 

■”五輪時のコロナ感染拡大リスク、日本食グローバル化”

  •  いよいよ7/23(金)に夏季五輪東京大会の開会を迎えることとなった。本来ならば、交通機関が多くの国内・外国人観光客でごった返し、宿泊施設やレジャー施設、飲食店・小売店なども盛況となって株価を押し上げることが期待されたイベントだったが、現実は逆に日本株下落のトリガーとなるリスクとみなされつつある。

 

  •  緊急事態宣言の発令下、新型コロナウイルス感染者数の抑制が求められるなか、五輪開催のお膝元である東京都の新規感染者数が7/14から1,000人の大台を超えて増加中。7/4の東京都議選で自公で過半数に届かずに敗北を喫した自民党内では菅首相の求心力が低下していることから、五輪期間中に更に新規感染者数が急増となった場合、「菅首相では今秋の衆議院選挙を戦えない」という風潮が一挙に台頭する可能性がある。都議選で影響力を強めた小池都知事が自民党の二階幹事長を通じて国政に復帰または関与するのではないかという思惑とともに、次期総裁候補を巡って政治空白が生じる懸念もあり、政局が日本株相場を揺るがす展開もあり得よう。7/9の3市場合計の信用買い残、および信用買い残を売り残で割った信用倍率ともに前週末比増加・上昇となり、需給の悪化が続いている時期でもあることから、日本株相場は当面、上値が重く悪材料に敏感となりやすい展開が想定される。

 

  •  新型コロナウイルス感染拡大防止の措置がとられるアジア・アセアン地域では、外国人旅行客の受け入れ再開が進まないことから、観光や外食を中心に深刻なダメージが続いている。そこで注目されているのが、健康的で美容にも良いというイメージがある日本食に照準を合わせた国内需要の喚起である。タイでは、日本食好きなタイ人創業者の設立した「オイシ」グループが日本食や日本茶に由来する様々な自社ブランドをタイ一円で展開してるなか、ようやく日本からもFOOD & LIFECOMPANIES3563が回転寿司で国内首位の「スシロー」をタイで本格展開することとなった。また、亀田製菓2220は日本でお馴染みの「柿の種」をインドで「カリカリ」という商品に進化させ、インド人副社長による世界戦略の舵取りの下、インドから世界に輸出を始めた。

 

  •  更に、昨年8月にカレーの本場インドで三井物産8031との合弁事業でCoCo壱番屋の第1号店をオープンした壱番屋7630も、2021年2月期末の海外店舗数を前期末比3店増の188店とした。日本食は高いブランド価値を活かして海外では高付加価値商品として受け入れられ易く、業績への貢献が期待される。(笹木)

 

7/19号では、亀田製菓(2220)、星野リゾート・リート投資法人(3287)、旭化成(3407)、出光興産(5019)、セントラル・パタナ(CPN)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 719日(月):小松ウオール工業、(米)IBM
  • 720日(火)ディスコ、アルインコ、(米)インテュイティブサージカル、ネットフリックス、フィリップ・モリス・インターナショナル
  • 721日(水):アジュバンコスメジャパン、エイトレッド、オービック、オービックビジネスコンサルタント、ジャフコグループ株式会社、モバイルファクトリー、岩井コスモホールディングス、光世証券、東京製鐵、日本電産、野村不動産ホールディングス、(米)CSX、テキサス・インスツルメンツ、ベライゾン・コミュニケーションズ、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)ASMLホールディング、コカ・コーラ
  • 722日(木)キヤノン電子、ビオフェルミン製薬、(米)インテル、キャピタル・ワン・ファイナンシャル、ベリサイン、ユニオン・パシフィック、AT&T、アボットラボラトリーズ、バイオジェンDow Inc、アメリカン・エレクトリック・パワー、ダナハー
  • 723日(金):(米)アメリカン・エキスプレス、ネクステラ・エナジー、ハネウェルインターナショナル

 

主要イベントの予定

  • 719日(月)

・ヤマハ発が環境技術説明会、首都高の日中料金1000円上乗せが開始(8月9日まで)、首都圏新築分譲マンション(6月)、月例経済報告(7月)

・ヨルダン国王が米大統領と会談(ワシントン)、米NAHB住宅市場指数(7月)

 

  • 720日(火)

・アシロが東証マザーズに新規上場、ジェフ・ベゾス氏のブルーオリジンが初の有人宇宙船打ち上げ

・米住宅着工件数(6月)

 

  • 721日(水)

・ランドネットが東証ジャスダック新規上場、日銀金融政策決定会合議事要旨(6月17・18日分)、貿易収支(6月)、スーパーマーケット売上高(6月)、工作機械受注・改定値(6月)、訪日外客数(6月)

・キャシー・ウッド氏らが参加のビットコイン関連イベント「The BWord」

 

  • 722日(木)

ECB政策金利発表・ラガルド総裁会見、南ア中銀・インドネシア中銀が政策金利発表、G20環境相会合

米新規失業保険申請件数(17日終了週)米中古住宅販売件数(6月)、米景気先行指標総合指数(6月)、ユーロ圏消費者信頼感指数(7月)

 

  • 723日(金)

32回夏季五輪・東京大会開会(8月8日まで)

・ECB専門家予測調査、ロシア中銀が政策金利発表

マークイット米製造業・総合・サービス業PMI(7月)、ユーロ圏製造業・総合・サービス業PMI(7月)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

2つのダイバージェンスに注目

今年5月中旬以降、S&P500株価指数が堅調に上昇する一方、グローバル経済の景況感を表しやすいとされる豪ドルの対円レートは下落に転じている。過去1年間の推移を見ても、今年5月頃までは両者の高い相関関係が示されていたなか、足元はダイバージェンス(逆行現象)が発生。また、外航不定期船の運賃指数であるバルチック海運指数と米国10年国債利回りの推移でも、今年6月中旬以降は両者の相関関係が崩れてダイバージェンスがみられるようになった。

豪ドル相場下落や米長期金利低下はグローバル経済減速を示す一方、バルチック海運指数の上昇は海上輸送物流混乱に伴うコスト上昇圧力の高まりを表すと言えよう。これらの関係からは米国株価上昇の持続力に疑問の余地があろう。

【2つのダイバージェンスに注目~米国株の逆行高、コスト高での金利低下】

 

■中国の金融緩和と商品市況

7/9、中央銀行の中国人民銀行が金融機関から強制的に預金を預かる預金準備率を0.5ポイント引き下げた。これにより、新たに約1兆元が市場に供給されると見込まれている。名目GDPに対する与信の伸び率変化を示す「クレジット・インパルス」の下落に歯止めがかかっていないものの、6月の中国の銀行新規融資額が前月比41%増と伸びが加速した。

表向きの理由は原材料価格高騰で厳しい経営状況が続く中小零細企業の資金繰り支援とされているが、巨額債務を抱える大手不動産会社のデフォルトによる信用不安への危機感の表れとの見方も出ている。中国の金融緩和により商品市場への資金流入再開を期待する向きもみられたが、銅や銀の先物価格の上昇力は鈍いように見受けられる。

【中国の金融緩和と商品市況~預金準備率引下げも、金属価格の上昇鈍い】

 

■工作機械受注と個別銘柄株価

日本工作機械工業会が7/12に発表した6月の工作機械受注(速報値)は前年同月比96.6%増と8ヵ月連続のプラス。内需は同91.5%増と4ヵ月連続のプラス、外需は同99.3%増と8ヵ月連続のプラスとなった。内需は2018年12月から27ヵ月連続で前年同月比マイナス、外需は2018年10月から23ヵ月連続の同マイナスの状況からの回復が進んでいるとみられる。

過去5年間の前年同月比では、内需が2018年1月の47.3%増、外需が2017年11月の65.4%増から伸びが減速。主要工作機械メーカーの同期間での株価推移を見ても、DMG森精機(6141)のように2018年1月にピークを付けてから下落に転じた銘柄が多い。一方、中国経済の影響が相対的に小さいマキタ(6586)は2018年9月まで上昇していた。

【工作機械受注と個別銘柄株価~前年同月比プラスでも伸びの減速に注意】

■銘柄ピックアップ

亀田製菓2220)  

4,620 円(7/16終値)

・1957年に新潟県中蒲原郡亀田町で設立。菓子の製造販売を主な事業内容とし、国内米菓事業、海外事業、食品事業、および貨物運送等のその他事業を営む。せんべいなど米菓で国内首位。

・5/13発表の2021/3通期は、売上高が前期比0.5%減の1,033.05億円、営業利益が同3.3%減の56.20億円。巣ごもり消費の定着に伴う家飲み需要の増加により主力商品の「亀田の柿の種」などのおつまみ系商品が伸びたが、コロナ禍の影響で百貨店向け商品や土産物商品が伸び悩んだ。

・2022/3通期会社計画は、売上高が847億円、営業利益が同6.8%増の60億円。「収益認識に関する会計基準」適用のため、売上高前期比を記載していない。2020年1月よりインド版の柿の種「カリカリ」の販売開始。デリーやムンバイなど主要都市1,000以上の店舗での販売のほか、オンラインや自販機でも販売。UAEやオーストラリアに輸出を開始するなどインド発でグローバル商品化が進む

 

星野リゾート・リート投資法人3287) 

703,000 円(7/16終値)

・2013年設立。ホテル・旅館および付帯施設に対する投資を行うホテル特化型のREIT。主に星野リゾートグループの「星のや」、「星野リゾート 界」、「星野リゾート リゾナーレ」の3ブランドに投資する。

・6/15発表の2021/4期(2020/11-2021/4)は、営業収益が前期(2020/10期)比23.8%減の45.91億円、営業利益が同43.9%減の18.16億円、1口当たり分配金が同50.2%減の6,608円。マイクロツーリズムの推進や「Go To トラベル事業」の恩恵があったものの、緊急事態宣言が響き減収減益だった。

・2021/10期会社計画は、営業収益が前期(2021/4期)比5.4%増の48.39億円、営業利益が同2.5%増の18.62億円、1口当たり分配金が同4.0%減の6,344円。7/15終値で会社予想年分配金利回りが1.92%。星野リゾートの主な顧客層である富裕層の国内旅行へのシフト、および地元の人による地元への旅行の「マイクロツーリズム」の提唱の奏功で、高稼働率の維持・向上が期待されよう。

 

旭化成(3407    

1,192 円(7/16終値)

・1931年設立の総合化学メーカー。繊維・ケミカル・エレクトロニクス事業の「マテリアル」、住宅・建材事業の「住宅」、医薬・医療・クリティカルケア事業の「ヘルスケア」の3領域で事業を展開する。

・5/13発表の2021/3通期は、売上高が前期比2.1%減の2兆1,060億円、営業利益が同3.1%減の1,718.08億円。人工呼吸器の需要増などによりヘルスケア部門が増収増益だったが、マテリアル部門は4-6月のコロナ禍の影響、住宅部門は消費増税前の駆込み需要の反動減もあり減収減益。

・2022/3通期会社計画は、売上高が前期比12.8%増の2兆3,750億円、営業利益が同10.6%増の1,900億円。マテリアル部門での自動車関連と石化製品市況の回復、衣料関連の回復を見込む。7/5にCO2からリチウムイオン電池の電解液原料である高純度エチレンカーポネートと高純度ジメチルカーポネートを製造する技術について、海外大手化学メーカーと第1号ライセンス契約を締結。

 

出光興産(5019  

2,657 7/16終値

・1911年に出光佐三が創業後、1940年に設立。2019年に昭和シェル石油と経営統合。燃料油、電力・再生可能エネルギー、基礎化学品、高機能材、資源、およびその他の事業セグメントを運営。

・5/11発表の2021/3通期は、売上高が前期比24.6%減の4,556.62億円、営業利益が前期の▲38.60億円から1,400.62億円へ黒字転換。原油価格下落や販売数量減が響き減収となったが、燃料油事業で前年同期の在庫評価損が評価益に転じたことや製品マージン改善により営業黒字化。

・2022/3通期の会社計画は、売上高が前期比24.7%増の5,680億円、営業利益が同3.6%減の1,350億円。2021-22年度は120円の安定配当を基本とする方針。同社が有機EL材料で世界シェア30%超の首位を占めるなか、スマホメーカーが液晶から有機ELパネルへ切り替えを進めるほか、7/6に任天堂7974が発表した「ニンテンドースイッチ」新型機も液晶に替えて有機ELを採用した。

 

セントラル・パタナ(CPN) 

市場:タイ   50.25 THB7/15終値)

・1980年設立。タイ有数の財閥のセントラルグループ傘下の商業不動産開発最大手。3月末現在、ショッピングセンター34件、オフィスタワー10件、ホテル2件、住宅プロジェクト18件を開発・管理。

・5/17発表の2021/12期1Q(1-3月)は、一時的項目や会計基準変更の影響を除く調整後総収益が前年同期比22.4%減の66.48億THB、調整後純利益が同50.9%減の11.93億THB。昨年末からのタイでの新型コロナ感染再拡大の影響を受けたテナント支援のための賃料減額が響き減収減益。

・バンコクの「セントラルワールド」の中核テナントだった伊勢丹が昨年8月に閉鎖された一方、今年3/31、同セントラルワールド内に回転寿司「スシロー」のタイ第1号店がオープン。タイの寿司人気に応えて面積・席数ともスシローで世界最大とした。セントラル・パタナは、スシローのタイでの年平均5-10店の出店意向に対し、タイ全土に跨る自社の商業施設での受け入れを目指すと伝えられた。

 

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

7/19号「アジア・アセアンの国と『中所得国の罠』」

発展途上国が「中所得国」と呼ばれる一定規模まで経済発展をした後、成長が鈍化し、高所得国と呼ばれる水準には届かなくなる状態・傾向のことを「中所得国の罠」と呼ぶ。世界経済の中心がアジアへシフトしたとする見方が強まるなか、2020年のIMF統計の1人当たりGDPによれば、世界第2位の経済規模の中国が10,483ドルであり、アセアンでシンガポールに次いで経済発展を遂げているマレーシアが10,269ドル、タイが7,190ドルにとどまる。

今年3月に中国で開催された第13回全国人民代表大会(全人代)で、中国自身が1人当たり所得1万8千ドル以上を先進国とみなし、中レベルの先進国を1人当たり取得が3-4万ドル程度の水準としている。真の意味での「アジアの時代」の到来のためは、これらの中所得国が「中所得国の罠」から抜け出すことが必要条件だろう。

 

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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