【投資戦略ウィークリー 2021年6月7日号(2021年6月4日作成)】”メジャーSQ明けに注意、セラミックスで躍進する企業”

 

■”メジャーSQ明けに注意、セラミックスで躍進する企業”

  • 日経平均株価は、ビットコインなどの暗号資産の価格下落、および中国における与信の伸び鈍化に伴うコモディティ相場の上昇一服を受けて、5/11の29,200円台から5/13の27,300円台まで急落。しかし、その後は新型コロナワクチン接種の普及が始まったことと歩調を合わせて戻り基調となり、29,000円台を回復した。
  •  相場の転換点を予測するテクニカル分析の一つに一目均衡表の「対等数値」という考え方がある。これは、相場の転換点を表す「変化日」について過去の変化日と変化日に要した期間が次の変化日の目安になるというもの。日経平均株価の日足の推移では、昨年10/30の安値22,948円を起点として年初来高値である30,714円を付けた2/16までの取引日数は72日。これに対し、2/16から72日目が6/2だった。また、日経平均株価で16,300円台まで下落した昨年3/19から同年10/30までの取引日数が152日であるのに対し、10/30から152日目は6/15となる。6/11には先物取引とオプション取引の最終決済に係る3ヵ月毎の「メジャーSQ」が控えていることから、メジャーSQ明けの週は特に相場の変動性の高まりが警戒されよう。ただし、対等数値の基準となる変化日の捉え方は一義的に決まらず、かつ、相場の転換点が上昇(下落)から下落(上昇)へと必ずしも反転するものではなく、上昇(下落)が加速する場合も相場の転換点とみなされる場合があることには要注意だろう。
  •  2030年までのCO2排出量削減目標である2013年度比46%削減に向けて、政府は今夏に2030年度の電源構成見通しを正式決定する見通しだ。再生可能エネルギーは従来目標の22-24%から30%台前半に引き上げられると見込まれる。再生可能エネルギーの普及に向けて注目される素材・技術としては、セラミックスが挙げられる。セラミックスは狭義には陶磁器を指すが、広義では窯業製品の総称として用いられ、無機物を加熱処理し焼き固めた焼結体を指す。東証1部上場企業の中で陶磁器売上上位5社のうち、ノリタケカンパニーリミテッド5331)、TOTO5332日本碍子5333)、日本特殊陶業5334の4社が森村グループに所属。これら4社の合弁会社である「森村SOFCテクノロジー」は今年3月よりSOFC(固体酸化物形燃料電池)の要となるセルスタックの量産を開始した。また、日本碍子は電力を貯蔵するNAS(ナトリウム・硫黄)電池の開発で先行。蓄電した電気を一定電圧で取り出すことで、天候に左右され電圧が不安定となりやすい自然エネルギーの課題解決に向けた切り札として期待されよう。(笹木)

 

6/7号では、テックファームホールディングス(3625)、日本特殊陶業(5334)、アンリツ(6754)、東京センチュリー(8439)、タイ石油開発公社(PTTEP)を取り上げた。

 

 

■主な企業決算の予定

  • 67日(月):ACCESS、萩原工業、アイル、学情、アイ・ケイ・ケイ、フジ・コーポレーション、(米)Marvell Technology Inc
  • 68日(火): ミライアル、Casa、アルトナー、シルバーライフ
  • 69日(水): アセンテック、ベステラ、くら寿司、巴工業、ロック・フィールド、丹青社、(米)ブラウン・フォーマン、キャンベルスープ
  • 610日(木): アイモバイル、コーセーアールイー、サムコ、スバル興業、トップカルチャー、トビラシステムズ、ネオジャパン、ラクーンHD、ラクスル、鎌倉新書積水ハウス、東京楽天地
  • 611日(金): gumi、HEROZ、JMHD、エイチアイエス、エイチーム、オハラ、クミアイ化学工業、シーアールイー、シーイーシー、ジェイ・エス・ビー、ダントーHD、トーエル、トーホー、トルク、ナイガイ、ビューティガレージ、フリービット、プロレド・パートナーズ、ヤーマン、稲葉製作所、丸善CHIHD、三井ハイテック、神戸物産、日東製網

主要イベントの予定

  • 67日(月)

・景気先行CI指数・景気一致指数 (4月)

・国際原子力機関(IAEA )理事会(ウィーン、11日まで)、米アップルの世界開発者会議(WWDC、オンライン、11日まで)

・米消費者信用残高(4月)、 独製造業受注 (4月)、中国貿易収支(5月)中国外貨準備高(5月)

 

  • 68日(火)

・日立インベスターデイ、 雨宮日銀副総裁が日経フィナンシャル主催オンラインセミナー講演、毎月勤労統計(4月)、GDP改定値(1Q)、 経常収支 ・貿易収支(4月)、銀行貸出動向(5月)、倒産件数(5月)、景気ウオッチャー調査現状判断・先行判断(5月)

国際オリンピック委員会(IOC)理事会

米貿易収支 (4月)米求人件数(4月)、ユーロ圏GDP(1Q)、 独鉱工業生産(4月)、独ZEW期待指数(6月)、南アGDP(1Q)

 

  • 69日(水)

・マネーストックM2・M3(5月)、工作機械受注(5月)

・米卸売在庫(4月)、独貿易収支(4月)、中国CPIPPI (5月)中国経済全体のファイナンス規模・新規融資・マネーサプライ (5月、15日までに発表)、韓国GDP(1Q)

 

  • 610日(木)

・ワンダープラネットが東証マザーズに、テンダが東証ジャスダックに新規上場

・国内企業物価指数(5月)、対外・対内証券投資(5月30日-6月5日)、東京オフィス空室率(5月)

ECB政策金利発表・ラガルド総裁記者会見、OPEC月報

米CPI (5月)米新規失業保険申請件数(5日終了週)、米財政収支(5月)

 

  • 611日(金)

・景況判断BSI大企業製造業・全産業(2Q)

・ロシア中銀が政策金利発表、国際エネルギー機関(IEA)月報、G7首脳会議(英コーンウォール、13日まで)

・米ミシガン大学消費者マインド指数(6月)、英鉱工業生産 (4月)

 

  • 612日(土)

・米ゲーム見本市「E3」一般公開(オンライン、15日まで)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

米国株の大型買収案件

米S&P500構成企業をターゲット企業とした大型買収案件のうち、2020年初以降の発表日で取引金額総額が発表され、かつ6/3時点で未完了(提案済みまたはペンディング)の案件が10件ある。その内、ターゲット企業の株価が買収発表日終値を下回って推移しているものもあることから、買収確定により当初の買収プレミアムが株価に織り込まれれば良い投資機会となることもあり得ると思われる。

バイオテクノロジー企業をターゲットとした英医薬品のアストラゼネカAZNによる複数の大型買収、および金融情報サービス分野でS&PグローバルSPGIによるIHSマークイットINFOの買収などの案件が成立すれば、競合他社が負けじと規模の拡大を目指して、相次いで大型買収を目指す展開も考えられよう。

【米国株の大型買収案件~S&P500企業ターゲットの未完了案件に注目】

 

■5月の米中製造業の景気動向

5/31に中国国家統計局が5月の製造業購買担当者指数(PMI)を、6/1に米供給管理協会(ISM)が5月の製造業景況指数を発表。生産コスト面は、米国の支払価格指数が2008年半ば以来の高水準だった前月から低下した一方、中国の投入価格指数が2010年以来の高水準高騰。受注面は、米国の新規受注が約17年ぶりの高水準に近い水準まで上昇した一方、中国の新規輸出受注指数が50を下回った。製造業を取り巻く環境は相対的に米国のほうが中国よりも良好であることを示したと言えよう。

一方で、米国の入荷遅延指数は原材料不足や出荷遅れ等により78.8と1974年4月以来の高水準。支払価格指数と入荷遅延指数が共に高騰するのは異例であり、インフレを軽視できない根拠となろう。

5月の米中製造業の景気動向~インフレ圧力の高まりに伴う動きに注目】

 

■新型コロナワクチン接種回数

国内で新型コロナワクチンを1回以上接種した人が6/1時点で1,000万人を超えた。政府は1日当たり100万回接種達成を目指しており、高齢者向けワクチン確保に続き、6/21より職場や大学で64歳以下の一般にも接種を開始する予定。

米国では今年1月から4月半ばまでワクチン接種回数の加速とNYダウ平均株価の上昇が連動した。米国で4月中旬にワクチン接種回数が鈍化したのは、全ての州で16歳以上の人が接種できるようになり、1回以上の接種を終えた人が18歳以上の人口の半分以上に達した時点だった。統計局による昨年12月時点の人口推計値では、日本の15歳以上の人口は1億1,065万人。1日100万回の接種だと約55日でその人口の半分に1回以上のワクチン接種が行き渡る計算となる。

【新型コロナワクチン接種回数~株価押し上げ材料としての持続性は?】

 

■銘柄ピックアップ

テックファームホールディングス3625

679 円(6/4終値)

・1991年設立。システム受託開発の「ICTソリューション」、自動車整備工場向けソフトウェア開発の「自動車アフターマーケット」、農産物海外輸出に係る「農産物輸出ソリューション」の3事業を展開。

・5/14発表の2021/6期9M(2020/7-2021/3)は、売上高が前年同期比7.1%減の43.39億円、営業利益が同14.9%増の7,651万円。自動車アフターマーケット事業の子会社株式の大半を譲渡したことが減収に響いた一方、農産物輸出ソリューション事業のセグメント損失幅縮小が営業増益に貢献。

・通期会社計画は、売上高が前期比4.9%減の60億円、営業利益が同4.8%増の2.3億円、当期利益が子会社株式売却に伴う特別損失計上により▲6億円。2021年1-3月の日本の農林水産物輸出額はアジアを中心に前年同期比30%増の2,553億円に拡大。同社はシンガポール向けに、越境EC開設のほか、旅行大手JTB等と提携して冷凍ミールキットを輸出し、日本食の販路拡大を目指す。

 

日本特殊陶業5334

 1,724  円(6/4終値)

・1936年に日本碍子5333からスパークプラグ部門を分離。スパークプラグやセンサーなど主力の「自動車関連」のほか、「セラミックス関連」、「メディカル関連」、「新規事業関連」の4事業を営む。

・5/7発表の2021/3通期は、売上収益が前期比0.3%増の4,275.46億円、営業利益が同2.2%減の473.89億円。営業利益では1Q(4-6月)が前年同期比90%減だったが、2Q(7-9月)と3Q(10-12月)で改善。通期では自動車関連における下期での輸送コスト上昇や貴金属価格の高騰が響き減益。

・2022/3通期会社計画は、売上高が前期比15.1%増の4,920億円、営業利益が同5.5%増の500億円。同社を含む森村グループ4社の合弁会社「森村SOFCテクノロジー」が今年3月に固定酸化物形燃料電池(SOFC)発電システムの主要部品(SOFCセルスタック)の量産を開始。日立造船7004は同部品の調達により燃料電池市場に参入の意向。日本特殊陶業は同合弁会社の67%を出資。

 

アンリツ(6754

 2,048  円(6/4終値)

・1931年に安中電機製作所と共立電機が合併し設立。計測およびPQA(プロダクツ・クオリティ・アシュアランス)の開発・製造・販売を主な事業とする。通信系計測器は海外でも高シェアを占める。

・4/27発表の2021/3通期は、売上収益が前年同期比1.0%減の1,059.39億円、営業利益が同12.8%増の196.51億円。一部顧客の投資が慎重姿勢だったことが減収に響いたが、5G商用化向けの開発関連需要、およびネットワーク高速化向けの開発・生産関連需要の獲得が順調だった。

・2022/3通期会社計画は、売上収益が前期比7.6%増の1,140億円、営業利益が同4.3%増の205億円。総務省がソフトバンク9434に対し5G基地局の整備遅れに係る行政指導を実施。今後の基地局開設ペース上昇が見込まれ、同社の計測事業への追い風となろう。また、食品向け異物検出機を取り扱うPQA事業にとって6/1からの品質管理に係るHACCP(ハサップ)義務化が恩恵となろう。

 

東京センチュリー(8439 

 6,580 6/4終値

・1969年に設立。伊藤忠商事8001が筆頭株主。2020年にNTT9432と資本業務提携。「国内リース」、「国内オート」、プロダクツを対象とした「スペシャルティ」、「国際」の4事業から構成される。

・5/13発表の2021/3通期は、売上高が前期比2.9%増の1兆2,001億円、営業利益が同12.7%減の771.54億円。2019年12月に連結子会社化した米航空機リースのAviation Capital Groupの業績反映により増収だったが、コロナ禍に伴うレジャー需要減退によるレンタカーの減収が利益面に響いた。

・2022/3通期会社計画は、経常利益が前期比28.0%増。新型コロナワクチン接種の普及によるレンタカーの販売回復を見込むほか、自動運転を見据えた資本業務提携、太陽光発電におけるNTTグループとの共同事業運営などが有望とみられる。また、Aviation Capital Groupは世界約45ヵ国・約95社の航空会社に小型機のリースを行っており、世界的な航空機需要の回復が追い風となろう。

 

タイ石油開発公社(PTTEP) 

市場:タイ      120.50 THB6/2終値)

・1985年設立。国営のタイ石油公社(PTT)の子会社であり、タイ国内外の石油探鉱・生産のほか、海外のガスパイプライン輸送、エネルギー事業と戦略的に連携したプロジェクトへの投資を行う。

・4/28発表の2021/12期1Q(1-3月)は、パイプライン輸送からの売上高が前年同期比6.1%減の13.91億USD、一時的要因を除く調整後純利益が同2.8%減の2.82億USD。ガス・液体の加重平均販売価格下落が業績に響いた。前四半期比は、同売上高が0.4%増、調整後純利益が67.9%増。

・2021/12通期会社計画に関し、1日当たり平均販売数量、ガス平均販売価格、EBITDAマージン予想を引き上げた。タイ国内のガス田減衰に対し、2月に石油大手の英BPからオマーンの天然ガス権益を20%取得すると発表。親会社のPTTが冬季にエネルギー需給逼迫が懸念される日本に火力発電の燃料となる液化天然ガスを輸出する方針を示すなか、海外でのガス田開発が追い風となろう。

 

■アセアン株式ウィークリーストラテジー

6/7号「インドネシアが上位中所得国から陥落か」

世界銀行の1人当たり国民所得(GNI)による分類でインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイが「上位中所得国」とされていたなか、インドネシアはコロナ禍の影響を受けて2020年に実質GDP成長率がマイナス2.07%に縮小したことに伴い、僅かながら上位中所得国とされる下限を下回ったとみられる。インドネシア政府は2022年までの上位中所得国への回復のため年間5%の経済成長が必要であるとし、2020年の投資額の約4,900兆ルピア(IDR)に対して2021年に約1,000兆ルピアの追加投資を目指す方針を示した。しかしながら、5月下旬発表のインドネシアの1-3月期のGDPは、GDPの約6割を占める家計消費の不調が響き、前年同月比0.74%減と4四半期連続のマイナス成長だった。上位中所得国への復帰に向けて大規模な経済対策が求められていると言えそうだ。

 

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家や投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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