【投資戦略ウィークリー 2020年8月17日号(2020年8月14日)】”動き出す政局、求められる経済対策”

 

■”動き出す政局、求められる経済対策”

  •  当ウィークリー8月3日号「調整局面完了のタイミングを見計らう時期か?」で述べたとおり、8/7が重要な転機の日となったように見受けられる。8/7発表の7月の米国雇用統計で非農業雇用部門者数の伸びが市場予想を上回り、米国景気持ち直しの動きが停滞していないことが示唆され、米長期金利も上昇基調に転じた。日経平均株価は8/7に22,204円まで下落後に上昇に転じ、8/14に23,338円を付けた。当面は日本株にとっても米国景気指標および米長期金利の動向が重要になると考えられるが、8/17には日本の4-6月GDPが発表される。市場の焦点は既に7-9月GDPの方に向いていると見られるが、悪い数字であっても政府が危機感を持って経済対策に取り組む契機として前向きに捉えられる余地もあろう。
  •  11月上旬の米国大統領選挙まで残り約2ヶ月半となるなか、トランプ米大統領は中国の動画投稿アプリ「TikTok」や通信アプリ「WeChat」が関わる取引を米国居住者が行うことを禁止する大統領令に続き、追加の新型コロナウイルス経済対策を実施する大統領令に署名するなど再選に向けて外交および経済で強力な政策を打ち出している。しかし、選挙に向けた政局が重要になりつつあるのは日本も同様である。8/13、国民民主党が事実上分裂し立憲民主党と合流することが合意された。年内衆議院解散・総選挙の可能性が意識され、新党結成の動きへと繋がったものと見られる。特に、来年1-6月の通常国会、7-8月のオリンピック・パラリンピック、9月の自民党総裁任期満了のスケジュールを考慮すれば十分にあり得ると考えられよう。仮に年内解散となった場合、政府が選挙を意識して一段と強力な経済対策を実施する公算が大きいものと期待され、日本株市場に資金が流入することが見込まれよう。
  •  ただし、新型コロナウイルス感染再拡大が加速し緊急事態宣言が再発令されるような事態になれば、「3密」回避の観点から選挙は見送られる可能性が高いだろう。特に今秋以降はインフルエンザと新型コロナウイルスの両方にかかることによる混乱が世界的に懸念されており、先ずは政府としてもインフルエンザ予防対策を優先することが重要だ。仮に選挙が行われないとしても新型コロナウイルス感染拡大の影響が収束しなければ、持続化給付金などの財政支出の拡大ペースを引き上げていくことが求められよう。その意味では株式市場にとって年内解散選挙の有無にかかわらずプラスの面が出やすいと考えられる。当面の懸念材料は米国主要IT企業の株価の短期的な買われ過ぎの反動という点だろうか。
  • 8/17号では、明治ホールディングス(2269)、日本電子材料(6855)、キャノンマーケティングジャパン(8060)、C&Fロジホールディングス(9099)、インドフード・サクセス・マクムール(INDF)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 817日(月):ビジョン、フォーバル、JDドットコム
  • 818日(火): あいホールディングス、アジレント・テクノロジー、ホーム・デポ、コールズ、アドバンス・オート・パーツ、ウォルマート
  • 819日(水):シノプシス、Lブランズ、エヌビディア、アナログ・デバイセズ、TJX、ターゲット、ロウズ
  • 820日(木): 船井総研ホールディングス、グリー、ロス・ストアーズ、キーサイト・テクノロジーズ、エスティローダー
  • 821日(金): VTホールディングス、ディア

 

 

主要イベントの予定

  • 8月17日(月)

・GDP (2Q)、鉱工業生産(6月)

・米民主党全国大会(ウィスコンシン州ミルウォーキー、20日まで)

・米ニューヨーク連銀製造業景況指数 (8月)、米NAHB住宅市場指数 (8月)、対米証券投資 (6月)

・タイGDP (2Q)

 

  • 8月18日(火)

・OPECプラスで主要閣僚がオンライン会合

・米住宅着工件数 (7月)

 

  • 8月19日(水)

・貿易収支 (7月)、 コア機械受注 (6月)

・米FOMC議事録 (7月28、29日開催分)

・インドネシア中銀が政策金利発表

・ユーロ圏CPI (7月)、英CPI (7月)

 

  • 8月20日(木)

・ニューラルポケットが東証マザーズに新規上場

・対外・対内証券投資 (8月9-15日)、コンビニエンスストア統計(7月)

・サンフランシスコ連銀総裁が講演

・フィリピン中銀、政策金利発表

・米新規失業保険申請件数 (15日終了週)、 米景気先行指標総合指数 (7月)

 

  • 8月21日(金)

・全国CPI (7月) 、 じぶん銀行 日本PMI製造業・サービス業・ コンポジット(8月) 、スーパーマーケット統計(7月)、全国百貨店売上高(7月)、東京地区百貨店売上高(7月)、訪日外客数(7月)

・米中古住宅販売件数 (7月)、マークイット米製造業・サービス業・コンポジットPMI (8月)

・ユーロ圏製造業・サービス業・総合PMI (8月)、 ユーロ圏消費者信頼感指数 (8月)

 

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

ナスダックとS&P100の逆行現象

米国主要株価指数のうち、8/12現在でS&P500とダウ平均株価は今年2月の年初来高値を超えていないが、ナスダック総合指数とS&P100株価指数(S&P500構成銘柄のうち時価総額上位100の優良銘柄で構成される)は2月の高値を超え、今月は史上最高値を更新中である。

ただし、上記2株価指数に関し、過去14日間において終値の上げ幅(前日比)の合計と下げ幅(同)の合計を足した値に対する上げ幅(同)の合計値の比率(%)であるRSI(相対力指数)は、昨年末から年初におけるピークの水準を下回って推移している。テクニカル分析上はこれをダイバージェンス(逆行)と言い、相場転換を示唆する有力なシグナルと見られる場合が多い。ダイバージェンスの傾向が続くかどうか要注意だろう。

【ナスダックとS&P100の逆行現象~最高値更新後のRSIは年初水準未満】

 

■金銀比価と金融危機の関係

貴金属市場参加者の間では、金と銀の価格が大きく乖離すると金融危機が起こりやすいということが良く言われる。金価格を銀価格で割って算出する「金銀比価(Gold Silver Ratio)」がその指標とされ、金銀比価が80倍を超えてくると要注意とされる場合が多い。過去を振り返ると、ITバブル崩壊後の2003年、リーマンショック後の2009年、チャイナショックおよびブレグジットに係る2016年に80倍に達し、株価もその時期に下落していた。

米中摩擦が進行した2018年半ば以降は金銀比価が80倍を上回り、コロナ禍で2020年3月に120倍に達したが、FRBほか世界の中央銀行が金融緩和を強化したこともあり、今年8月に約2年ぶりに金銀比価が80倍を下回った。金融危機のリスクが遠ざかったと見る余地もあろう。

【金銀比価と金融危機の関係~金銀比価80倍割れは経済にプラスの兆候】

 

■取引所運営企業のPBR・PER推移

日本取引所グループJPX8697は、7/27に東京商品取引所から大阪取引所に商品先物取引を移管し総合取引所として運用を始めたほか、7/29より日経平均株価の構成銘柄となった。日本株を代表する「指標銘柄」として流動性の高まりが期待されるなか、株価水準については世界の主要取引所を運営する上場企業のPBR(株価純資産倍率)やPER(株価収益率)と比較されるものと見られる。

JPXは、PBRが香港取引所やSGXよりも低く、米国の主要取引所運営企業よりも高い。一方で、PERが香港取引所よりも低く、米国の主要取引所運営企業やSGXよりも高い。東京がアジアの金融ハブを目指すなか、JPXの株価水準に係るPBRやPERもアジアの有力取引所である香港取引所やSGXが意識されよう。

【取引所運営企業のPBRPER推移~日本取引所グループ(8697)株価検証】

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

8/17号「時価総額最大のアセアン企業」

シンガポール市場には上場していないが、ニューヨーク市場にADR(米国預託証券)を上場している情報技術サービス会社のシー(Sea Limited)はシンガポール企業であり、8/12終値の時価総額(約600億USD)はアセアン企業で最大である。同社は利益面で赤字を継続中だが、オンライン・デジタルコンテンツやEコマース、決済プラットフォームを提供し、将来的に中国のテンセント・ホールディングスアリババ集団のような企業になるのではないかとの期待から株価の年初来騰落率が約3.2倍となっている。同社は金融サービスへの進出を加速するためシンガポールのデジタル銀行免許を申請しているほか、ゲームや物流、Eコマース関連の買収の可能性を模索していると伝えられる。アセアン市場におけるフィンテック関連分野では目が離せない存在の注目企業と言えよう。

 

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は、個人投資家として活動する一方、投資セミナー講師としても活躍。テクニカル分析を得意とし、以前よりTwitterで米国市場関係者のアカウントをフォローし米国市場動向にも詳しい。アセアン諸国に長期滞在経験もあり、実用タイ語検定3級資格を保有するタイ通でもある。2019年1月にフィリップ証券入社、日本・米国・アセアン市場をカバー。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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