【投資戦略ウィークリー 2020年7月20・27日合併号(2020年7月17日)】”バリューへのシフトと米中対立が日本株への追い風””

 

■”バリューへのシフトと米中対立が日本株への追い風”

  •  資産運用世界最大手のブラックロックがファクター別の投資で「バリュー投資」をアンダーウエイトから中立に1ランク格上げしたことは当ウィークリー先週号(海外マネーは日本株にポジティブな姿勢へ)で述べたところだが、その他にも、7/14に米投資家のビル・グロース氏が、短期的にはアップルAAPLアマゾン・ドット・コムAMZNといった成長株よりもIBMIBMやタバコのアルトリアMOなど高配当利回り銘柄のアウトパフォームが期待できるとの見方を示した。7/16にネットフリックスNFLXが好調な4-6月期の決算を発表したものの時間外取引で急落したほか、テスラTSLAアマゾン・ドット・コムマイクロソフトMSFTなど米成長株を代表するNYSE FANGプラス指数の構成銘柄が揃って7/13にローソク足で大きな陰線を付けて7/16まで短期的に下落している。その一方、IBMアルトリアの株価は堅調に推移。日本株においても、予想配当金や予想利益などの業績の先行きが見通しやすいことを条件に、高配当・高分配金利回り銘柄、あるいは低PBR銘柄へ資金がシフトする可能性がある局面なのかも知れない。
  •  2018年10月以降、貿易摩擦を中心に米中対立の激化が株式投資における構造的なリスク要因として挙げられる状況が続いている。先月末の香港国家安全法の施行後、香港の自治侵害に関与した中国を含む金融機関への制裁を可能にする香港自治法が米国で成立。特に、米国は安全保障上のリスクを理由に中国のファーウェイ排除の姿勢を強め、英国も当初の限定的な参入容認姿勢から一転し、7/14に次世代5G通信網から同社を排除すると発表。通信ネットワーク機器でファーウェイから代替できる選択肢はフィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソン、韓国のサムスン電子のほか、日本のNEC6701が挙げられるなか、当ウィークリー2020年6月29日号(電々ファミリー復活は日本株復活への号砲か?)で既述の通り、NECはNTT9432との資本業務提携を通じて世界進出を目指す姿勢を示している。米中対立リスクがファーウェイ排除を通じ、旧電電ファミリー企業の結集による通信インフラ投資における日本企業への追い風を提供している面も強い。
  •  東京都ほか日本の新規感染者数の増加が株価の上値を押さえる展開が続いているが、その増加はPCR検査の強化による面が大きいと見られる。バリュー投資へのシフトや長期的な追い風要因を考慮すれば、感染者数増加が重症患者数の増加に繋がらない状況が続くことで株価上昇をうかがう展開となるのではないだろうか。
  • 7/20・27号では、日本たばこ産業(2914)、広栄化学工業(4367)、パラマウントベッドホールディングス(7817)、平和不動産リート投資法人(8966)、シンガポール取引所(SGX)を取り上げた。

 

■主な企業決算の予定

  • 720日(月) IBM
  • 721日(火):富士通ゼネラル、日本電産、ディスコ、テキサス・インスツルメンツ、ロッキード・マーチン、フィリップ・モリス・インターナショナル、コカ・コーラ
  • 722日(水):ネットワンシステムズ、サイバーエージェント、オービック、ジャフコ、マイクロソフト、ダナハー、サーモフィッシャーサイエンティフィック、バイオジェン、テスラ
  • 723日(木)インテルDow IncAT&T、ベリサイン
  • 724日(金):シュルンベルジェ、ベライゾン・コミュニケーションズ、アメリカン・エキスプレス、ハネウェルインターナショナル、ネクステラ・エナジー
  • 727日(月):ニフコ、中外製薬、日東電工、日立建機、スタンレー電気、キヤノンマーケティングジャパン、アマノ、三菱自動車工業、松井証券
  • 728日(火):HOYA、オムロン、キヤノン、シマノ、トクヤマ、ファナック、吉野家HDS、四国電力、小糸製作所、信越化学工業、大同特殊鋼、東京エレクトロン、日産自動車、日清製粉グループ本社、日立金属、ビザ、スターバックス、ファイザー、3M、マクドナルド、アムジェン、レイセオン・テクノロジーズ、アルトリア・グループ、スターバックス
  • 729日(水)ANA_HDS、PALTAC、SCREEN_HDS、エイチ・ツー・オーリテイリング、エムスリー、カゴメ、ヒューリック、花王、三井住友フィナンシャルグルーフ゜、三越伊勢丹HDS、滋賀銀行、静岡銀行、東京瓦斯、東京電力HDS、日本取引所グループ、日本精工、日野自動車、北陸電力、野村HDS、野村総合研究所、野村不動産HDS、クアルコム、ペイパルHDS、フェイスブック、ゼネラル・モーターズ、ゼネラル・エレクトリック、ボーイング、ゼネラル・ダイナミクス、ラムリサーチ、オートマチック・データ・プロセシング
  • 730日(木):JSR、SBI_HDSTDK、ZOZO、アコム、アドバンテスト、アンリツ、エス・エム・エス、オリエンタルランド、カルビー、きんでん、コニカミノルタ、パナソニック、ポーラ・オルビスHDS、ミスミグループ本社、メイテック、ルネサスエレクトロニクス、沖電気工業、京セラ、協和キリン、三井住友トラストHDS、三菱電機、山九、小松製作所、小林製薬、積水化学工業、相鉄HDS、大阪ガス、大東建託、大日本住友製薬、大陽日酸、中国銀行、東海理化電機製作所、東日本旅客鉄道、東武鉄道、東邦瓦斯、東北電力、日本M&Aセンター、日本電気硝子、日立製作所、富士電機、北海道電力、味の素、アップル、フォード・モーター、イーライリリー、コムキャスト、アルファベットプロクター・アンド・ギャンブル、ユナイテッド・パーセル・サービス、クラフト・ハインツ、マスターカード、ザイリンクス、エレクトロニック・アーツ
  • 731日(金)AGCKDDI、MonotaRO、NTN、SCSK、SG_HDSTOTOZ_HDS、アイカ工業、アイシン精機、あおぞら銀行、アルプスアルパイン、インフォマート、ウシオ電機、エフピコ、オークマ、オートバックスセブン、カシオ計算機、キーエンス、コーセー、ジェイテクト、セイコーエプソン、セントラル硝子、ダイセル、タダノ、テイ・エステック、デンソー、トプコン、トヨタ紡織、ナブテスコ、マキタ、マツダ、みずほフィナンシャルグループ、メディパルHDS、ヤクルト本社、ヤマトHDS、りそなHDS、ローム、ワコールHDS、宇部興産、塩野義製薬、関西電力、京成電鉄、京都銀行、九州電力、九電工、三井物産、三菱倉庫、三和HDS、持田製薬、七十七銀行、住友重機械工業、住友電気工業、小田急電鉄、小野薬品工業、新生銀行、清水建設、西日本旅客鉄道、綜合警備保障、村田製作所、大和証券グループ本社、第一三共、中国電力、中部電力、東海旅客鉄道、東洋水産、東洋製罐グループHDS、東亞合成、南海電気鉄道、日本ゼオン、日本たばこ産業、日本テレビHDS、日本ハム、日本化薬、日本碍子、日本通運日本電気、八十二銀行、武田薬品工業、豊田合成、豊田自動織機、豊田通商メルク、キャタピラー、コルゲート・パルモリーブ、チャーター・コミュニケーションズ、アッヴィ、シェブロン、エクソンモービル

 

主要イベントの予定

  • 7月20日(月)

・日銀金融政策決定会合議事要旨(6月分)、貿易収支(6月)、コンビニエンスストア売上高 (6月)

 

  • 7月21日(火)

全国CPI (6) 百貨店売上高 (6)、東京地区百貨店売上高(6月)、工作機械受注(6月)

・米上院銀行委員会、シェルトン、ウォラー両氏のFRB理事指名で採決

 

  • 7月22日(水)

・じぶ ん銀行日本PMI (7月)、スーパーマーケット売上高 (6)、月例経済報告(7 )

・米FHFA住宅価格指数 (5月)、米中古住宅販売件数 (6月)

 

  • 7月23日(木)

・米大リー グ(MLB)開幕、南ア中銀が政策金利発表

・米新規失業保険申請件数 (18日終了週)、米景気先行指標総合指数 (6)

・ユーロ圏消費者信頼感指数(7月)、韓国GDP(2Q、速報値)

 

  • 7月24日(金)

・ロシア中銀が政策金利発表

・米新築住宅販売件数(6月)、マークイット米製造業・サービス業・コンポジットPMI(7月)

・ユーロ圏総合・製造業・サービス業PMI(7月)

 

  • 7月27日(月)

米耐久財受注(6月)

・ユーロ圏マネーサプライM3(6月)、独IFO企業景況感指数(7月)

 

  • 7月28日(火)

・企業向けサービス価格指数(6月)

・米FOMC(7/29まで)

コンファレンスボード消費者信頼感指数(7月)、リッチモンド連銀製造業指数(7月)

 

  • 7月29日(水)

・トルコ貿易収支(6月)

FOMC終了後政策金利発表、パウエル議長定例記者会見

・米住宅販売保留指数(6月)

 

  • 7月30日(木)

小売業販売額・百貨店スーパー販売額(6月)

・ユーロ圏消費者信頼感指数・確定値(7月)、独2QGDP、独CPI(7月)

米新規失業保険請求件数、米2QGDP(速報値)、コアCPE(速報値)

 

  • 7月31日(金)

・トルコ休場

失業率(6月)、鉱工業生産(6月)、新設住宅着工戸数(6月)、消費者態度指数(6月)

中国製造業購買担当者景気指数PMI7月)

ユーロ圏2QGDP、CPI(7月)

個人消費支出PCE6月)、シカゴ購買部協会景気指数(7月)、ミシガン大学消費者態度(7月)

 

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

※本レポートは当社が取り扱っていない銘柄を含んでいます。

 

ナスダックは実質金利と逆相関

ナスダック総合指数を米国を代表する株価指数であるS&P500で割った倍率は、今年3月以降、10年物米国物価連動国債(TIPS)利回りと逆相関の関係が見られる。TIPSの利回りは名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利とほぼ等しく、実質金利が低下するほど実質的借入コストが低下することから、TIPS利回りの低下が投資意欲が旺盛で資金調達ニーズが強いIT企業やバイオテクノロジー企業などの成長企業への恩恵となっていると見られる。

7/14発表の6月の米消費者物価指数は総合で前月比0.6%上昇と高い伸びだったが、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は前年同月比1.2%の緩やかな上昇にとどまった。インフレ期待の高まりは時期尚早かも知れない。

ナスダックは実質金利と逆相関~成長株投資の鍵を握るインフレ期待の高まり

 

■シンガポールと香港の金融

5/27に指数算出会社MSCIが同社指数を基にしたデリバティブ商品のライセンスをシンガポール取引所SGXから香港取引所388 HKに移すと発表。SGXの株価が急落した一方、香港取引所の株価は上昇した。米中対立激化を背景に香港からシンガポールへアジアの国際金融センターの主導権が移るのではないかという懸念に対し、金融ハブとしての香港の魅力を再認識させることとなった。

香港ドルの発券銀行でもある英銀のHSBCホールディングスとスタンダードチャータードは、米国に足並みを揃えて香港国家安全法の制定に反発する本国の英政府からの厳しい目を警戒しつつも、中国政府施行の香港国家安全法へ支持を表明。それだけ香港市場に金融ビジネスの魅力があると言う面が窺がわれよう。

シンガポールと香港の金融~SGXと香港市場の争い、香港の銀行は微妙な立場

 

■ファミリーマートへのTOBの影響

7/8伊藤忠商事8001がTOB(株式公開買付)の実施によりファミリーマート8028を完全子会社化すると発表。株価がTOB価格(2,300円)を上回る水準まで上昇。TOBの背景として、深刻な人手不足に伴う24時間営業問題、環境負荷となる食品ロス問題などコンビニの事業モデル見直しが迫られていること、およびEコマース急拡大により事業領域が浸食されつつあることが挙げられている。

業界として共通の課題に対し、親子上場となる他の企業グループにおいても親会社と一体となった経営が求められよう。イオン8267)の上場子会社であるミニストップ9946三菱商事8058の上場子会社であるローソン2651の7/8以降の株価が堅調に推移。TOBの可能性を織り込みつつあるのかも知れない。

ファミリーマートへのTOBの影響~親子上場子会社コンビニ運営企業に注目

 

■アセアン株式ウィークリー・ストラテジー

7/20・27号「中国経済との繋がり深化」

7/14発表の1-6月の中国貿易統計で、アセアンとの貿易額が国・地域別で初の首位となった。輸出と輸入を合計した貿易額では、前年同期比2%増の2,978億ドルとなり、今まで首位だったEU(同5%減の2,841億ドル)を逆転した。3位は貿易摩擦や外交関係の緊張が響いて同10%減となった米国だった。特に中国のアセアンからの半導体の輸入が同24%増、輸出が同29%増(いずれも人民元建て)となり、アセアンとの間で電器産業などで新たな供給網が構築されている模様だ。

また、コロナ禍において米国と中国がアセアンでの影響力を維持するためにマスクや医療物資などの支援競争でしのぎを削るなか、アセアンは米中のどちら側につくかという選択はできないという基本スタンスであり、是々非々での協力関係と多国間主義を守る方針のように見受けられる。

 

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は、個人投資家として活動する一方、投資セミナー講師としても活躍。テクニカル分析を得意とし、以前よりTwitterで米国市場関係者のアカウントをフォローし米国市場動向にも詳しい。アセアン諸国に長期滞在経験もあり、実用タイ語検定3級資格を保有するタイ通でもある。2019年1月にフィリップ証券入社、日本・米国・アセアン市場をカバー。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

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世界経済のけん引役と期待されるアセアン(ASEAN:東南アジア諸国連合)。そのアセアン各国で金融・証券業を展開し、マーケットを精通するフィリップグループの一員である弊社リサーチ部のアナリストが、市場の動向を見ながら、アセアン主要国(シンガポールタイマレーシアインドネシア)の株式市場を独自の視点で徹底解説します。

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