【投資戦略ウィークリー 2019年8月13日号(2019年8月9日作成)】“いつものように幕は開くか?~あれは3年前”

 

■いつものように幕は開くか?~あれは3年前

  •  8/5週の日本株は、8/1の米トランプ大統領による対中「関税第4弾」発動宣言に端を発した米中問題の荒波に翻弄される展開となった。8/5に人民元レートが1ドル7元に下落すると米国財務省が中国を「為替操作国」に認定し、それを受けて中国商務省が制裁として米農産品の新規購入一時停止を発表するなど報復合戦がエスカレートする様相を呈した。このような動きが投資家心理を冷やし、8/6には日経平均が20,110円まで下落し、1/10以来の安値となった。その後は中国が人民元レートの対ドル基準値を市場実勢より元高に設定したことから通貨戦争に発展する懸念が薄らぎ、日経平均も8/9に20,782円まで戻るなど日本株相場も落ち着きを取り戻しつつある。
  •  日本株相場を取り巻く様々な環境を見ると3年前(2016年)に類似した状況が見られる。第一に、日経平均の加重平均PBR(株価純資産倍率)では、8/6の日経平均安値20,110円が0倍に近づいたが、終値で1.0倍を割った日は昨年12/25を除けば2016年の2/12まで遡ることとなる。第二に、仮需では、東証信用倍率の7/5の2.21倍(8/2基準日は2.60倍に回復)は、2016/12/22(2.19倍)以来の低水準であり、先物・オプションとの裁定取引に係る現物買い残の6/21の3,963億円(8/2は5,435億円に回復)は、2016/9/16(3,451億円)以来の低水準だった。第三に、米国の景気指標を見ても、2019/7のISM(全米供給管理協会)製造業景況感指数の51.2は2016/8(49.4)以来の低水準であり、非製造業景況感指数の53.7も同じく2016/8(51.4)以来の低水準だった。
  •  2016年のドル円相場が6-8月に1ドル100円割れの円高となったことがあり、日米長期金利差が縮小しつつある現状を考慮すると急激な円高局面があっても不思議ではない。しかし、2016年当時は米大統領選前の秋頃から日本株や円相場を巡る需給が改善していった経緯もあり、時間の経過による相場環境の好転を期待するのが最良の投資戦略なのかもしれない。
  •  国内外の企業を問わず、来たる5GおよびIoT時代に「規模の経済(Economy of Scale)」と「範囲の経済(Economy of Scope)」を両立する「製造業(産業)プラットフォーマー」となる企業グループに「ポストGAFA」のチャンスがあるように思われる。(笹木)
  •  8/13号では、TIS(3626)、エニグモ(3665)、テルモ(4543)、楽天(4755)、東芝テック(6588)、ソニーフィナンシャルホールディングス(8729)を取り上げた。 

     

     

■主な企業決算の予定

  • 8月12日(月):シスコ
  • 8月13日(火):横浜冷凍、明和地所、デリカフーズホールディングス、日本アジア投資、サイボウズ、大分銀行、日本コンセプト、東京窯業、ベネフィットジャパン、パン・パシフィック・インター、オーイズミ、西本Wismettacホールディングス、アドバンスクリエイト、第一カッター興業、ニーズウェル、ダブルスタンダード、ハウスドゥ、キュービーネットホールディン、ゴルフダイジェスト・オンライン、やまみ、マーキュリアインベストメント、日本工営、ワタミ、ダブル・スコープ、コロプラ、日本商業開発、アイビーシー、フェイス、セグエグループ、ピーシーデポコーポレーション、レスターホールディングス、キャリアインデックス、グローバルキッズCOMPANY、エーピーカンパニー、イーレックス、アドバンス・オート・パーツ
  • 8月14日(水):日本基礎技術、光通信、バリューHR、藤倉コンポジット、Orchestra Holdings、プレミアグループ、セレス、オルトプラス、すかいらーくホールディングス、ビーグリー、東京機械製作所、ワイエイシイホールディングス、ダイオーズ、ツナググループ・ホールディング、スルガ銀行、出光興産、オプティム、ファインデックス、スマートバリュー、アミューズ、リブセンス、シンシア、マイネット、ブイキューブ、エムアップ、オープンハウス、ライドオンエクスプレスホールディングス、AOI TYO Holdings Inc、チェンジ、ボルテージ、日本エアーテック、第一屋製パン、リニカルエスサイエンス、トリドールホールディングス、ショーケース、エボラブルアジア、クロス・マーケティンググループ、ユニカフェ、アルテリア・ネットワークス、スカラ、ワイヤレスゲート、メーシーズ、アジレント・テクノロジー、シスコシステムズネットアップ
  • 8月15日(木):ウォルマート、エヌビディア、アプライドマテリアルズ
  • 8月16日(金):ディア

 

主要イベントの予定

  • 8月12日(月)

・米財政収支(7月)

・中国経済全体のファイナンス規模、新規融資、マネーサプライ(7月、15日までに発表)

 

  • 8月13日(火)

国内企業物価指数(7月)、第3次産業活動指数(6月)、工作機械受注(7月)

CPI7月)、米家計債務残高(4-6月)

・独CPI(7月)、独ZEW景況感指数(8月)

・シンガポールGDP(2Q)

 

  • 8月14日(水)

・機械受注(6月、7-9月見通し)

・米輸入物価指数(7月)

・ユーロ圏GDP(2Q)、ユーロ圏鉱工業生産(6月)、独GDP(2Q)

中国小売売上高、工業生産、固定資産投資(7月)

 

  • 8月15日(木)

・設備稼働率(6月)

米小売売上高(7月)、米新規失業保険申請件数(8月10日終了週)、米鉱工業生産(7月)、米NAHB住宅市場指数(8月)、米企業在庫(6月)、対米証券投資(6月)

・中国新築住宅価格(7月)

 

  • 8月16日(金)

・対外・対内証券投資(8月4-10日)

・米住宅着工件数(7月)、米ミシガン大学消費者マインド指数(8月)

・マレーシアGDP(2Q)

(Bloombergをもとにフィリップ証券作成)

 

■7月の米雇用統計のレビュー

米労働省が8/2発表した7月の雇用統計(速報値)では、非農業部門の就業者数が前月比16.4万人増。増加幅は前月の19.3万人から縮小したものの市場予想の同16.5万人増とほぼ一致。失業率(U-3)は3.7%と前月から横ばいで推移。平均時給は同3.2%増の27.98ドルと12ヵ月連続で3%台の伸びを維持した。雇用創出が底堅く推移する中、賃金も上昇しており、米労働市場の堅調さを示す内容だったといえよう。

世界経済の先行きや貿易政策を巡る懸念があるにも関わらず、米国経済は依然順調に推移している。足元、金利先物市場は次回9/17-18のFOMCでの利下げを100%の確率で織り込んでいるが、この先の利下げに経済的な論拠を挙げることは難しくなろう。(増渕)

 

 

■日米金利差縮小とドル円相場

米国長期金利の低下がドル安円高観測を強めているが、為替相場では金利水準よりも金利差の方が重要である。過去のドル円為替レートと日米10年国債利回り格差を見ると、2014-2015年を除いて相関関係が見られ、2009-2012年のように日米10年国債利回り差が2%を下回る局面でドル円が100円割れのドル安円高になる場面も見られる。

現在、日本国債10年利回りは日銀により「プラスマイナス0.1%の2倍程度」の誘導目標とされている。米国10年国債利回りは2016/7に1.32%の過去最低水準を付けているが、その場合、仮に日本10年国債利回りが▲0.2%ならば金利差は1.54%となってしまい、大幅に円高が進行するリスクが懸念される。追加緩和の可能性を考慮したい。(笹木)

 

 

■好調な情報技術サービス企業

4-6月期は企業の生産性向上に向けた旺盛な情報システム投資を背景に、情報技術サービス企業が業績を伸ばした。野村総合研究所(4307は、金融機関向けITソリューションが好調だったほか、顧客企業の老朽化したシステム基盤やアプリの最適化、クラウドネイティブアプリの開発などに取り組み、27.6%の増益。デバイス事業再編の影響で減益となった富士通(6702も、国内サービスの増収や採算性の改善により、本業ベースで大幅な増益を記録している。

6月の日銀短観では、2019年度のソフトウェア投資は前期比12.9%増と見込まれている。貿易摩擦による景気後退が懸念されているが、人手不足や働き方改革などへの対応もあり、拡大基調は今後も続く可能性が高い。(増渕)

 

 

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笹木和弘プロフィール笹木 和弘
フィリップ証券株式会社:リサーチ部長
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は、個人投資家として活動する一方、投資セミナー講師としても活躍。テクニカル分析を得意とし、以前よりTwitterで米国市場関係者のアカウントをフォローし米国市場動向にも詳しい。アセアン諸国に長期滞在経験もあり、実用タイ語検定3級資格を保有するタイ通でもある。2019年1月にフィリップ証券入社、日本・米国・アセアン市場をカバー。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト(CIIA®)。

 

増渕透吾プロフィール増渕 透吾
フィリップ証券株式会社:リサーチ部
1991年栃木県生まれ。2016年に広島大学大学院社会科学研究科社会経済システム専攻修了。経済学修士。国内証券で個人営業を経験し、2017年10月にフィリップ証券入社。米国株日本株アセアン株をカバーしている。ファイナンス的アプローチや理論に沿った考え方、データを用いた計量的な検証を心がけている。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員補。

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